映画『跳んで埼玉』

ゴールデンウイークとはいえども、なかなか予定が合わない我が家なのですが、4/28だけは私と妻が空いているということもあって、珍しく映画に行くことを考えました。
そうは言っても趣味がまるで別方向なので、どれを選ぶかが難しかったのですが、市内の映画館で上映中一覧の中から「これだ!」と選んだのが『翔んで埼玉』


映画『翔んで埼玉』公式サイト


私も妻も埼玉生まれ。一時期的に別の都県に住んだことはありますが、結婚後も含めてもっとも埼玉県民歴が長いです。
しかも原作が『パタリロ!*1魔夜峰央ということで、そのギャグには期待できそうと思って観に行きました。

解説
人気コミック「パタリロ!」の作者である魔夜峰央の人気漫画を実写映画化。埼玉県民が東京都民から虐げられている架空の世界を舞台に、東京都知事の息子と埼玉出身の転校生の県境を超えたラブストーリーが展開する。『ヒミズ『私の男』などの二階堂ふみと『カーラヌカン』で主要人物を演じたミュージシャンのGACKTが主演を務める。『テルマエ・ロマエ』シリーズなどの武内英樹がメガホンを取った。


あらすじ
東京都民から冷遇され続けてきた埼玉県民は、身を潜めるように暮らしていた。東京都知事の息子で東京屈指の名門校・白鵬堂学院の生徒会長を務める壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は、容姿端麗なアメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)と出会い、惹(ひ)かれ合う。しかし、麗が埼玉出身であることが発覚し......。
シネマトゥデイ


かつての武蔵国から東京都・神奈川県(一部)という美味しいところを取られて残った搾りかす…。
さすが埼玉県ディスり映画として知られているだけあって、冒頭の説明から飛ばしてましたよ。
埼玉県熊谷市に住む親子三人*2)が娘の結納のために出かけるところから始まります。
延々と畑と田んぼばかり続く一本道を走る車内ではカーラジオからNACK5が流れて、かつて埼玉県民が酷い差別を受けていた時代に埼玉解放を求めて戦った男の伝説が紹介されて、場面が移り変わります。
いわば、現実パートと伝説パートに分けて進行するのです。
これは原作の方が3話で未完という短い内容を補うのと、現実パートでネタを紹介する寸劇を出すためでしょうね。
wikipedia:翔んで埼玉


伝説パートではいかにも少女漫画らしく、まるでフランスあたりの王宮を思わせる白鵬堂学院の外観(白馬が走ってる!)や豪奢な内装。
しかし、同じ東京都民でも住んでいる区や市によって明らかに待遇が分かれているようで。
それでも埼玉と比べるとマシな方。
埼玉県出身で東京都に住む生徒はZクラスという、掘っ建て小屋に寺子屋を思わせる様子。
おまけに女子生徒はモンペを履いているし…。
他県から東京都に入るには通行手形が必要という設定なのですが、どうも東京都および神奈川県とそれ以外の県では100年くらいの断絶があります。
それでも同じ日本かよ!と思えるくらいここまで極端すぎるともう笑うしかないですな。
埼玉臭とか、「口が埼玉になる」とか、埼玉県民を検知(丸さ印が浮かぶ)して取り締まる変な隊員たちとかぶっ飛んだ場面の連続。
極めつけは生徒会長による「埼玉県民にはそのへんの草でも食わせておけ!」との名(迷)言ですよ。
ひたすら冷遇される埼玉県民。田舎者だと評されているのは他の県も同じなのですが、千葉県だけは都知事に阿っているのです。
密かに通行手形の撤廃を狙っているのですが、そうは簡単にいくわけがなく。
東京都知事は神奈川県知事だけと結び、影で埼玉と千葉の対立を煽っているのです。
まぁ確かに両県はライバル視している部分はあるでしょう。
千葉県の大きなアドバンテージとして海があること。
そこで埼玉県では密かに茨城県の沿岸まで地下トンネルを掘っていたのを千葉県民が妨害していたとか(笑)
埼玉県勢と千葉県勢が激突する流れとなって、緒戦に有名人出身地対決となったのも笑えましたね。
私は気づきませんでしたが、埼玉県勢にはふっかちゃん(埼玉県深谷市ゆるキャラ)が出ていたみたいだし、千葉県勢からはふなっしーの声も聞こえました。
現実パートの夫婦も夫が根っからの埼玉県民、妻が千葉県出身ということで、県のネタ(チバラギとか)で言い合いが始まるのも面白かったです。


こう書くといかにもギャグの連続のように見えるのですが、ぶっとんだ設定の割には映画の中で演じる俳優たちはいたって真面目に演じているのが良かったですね。
SF映画と時代劇が混在しているかのような派手な演出は映画ならではということで許せるでしょうか。
ただ、作中でBL(ボーイズラブ)があるとは知らなくて、そこだけはちょっとした衝撃でした。
そういえば『パタリロ!』のコミックでもそういうシーンがあったから、魔夜峰央原作ということでしょうがないかと思いました。
そうであっても個人的にはやっぱり苦手ですが…。事前知識がなくいきなり見てしまった人はびっくりしたんじゃないかなぁ。
主役たる麻実麗と壇ノ浦百美のキスシーンに関しては、百美を演じているのが女性ということで違和感なくて、「作中でも男装していて本当は女子なのでは?」と思ったのですが、本当に男子役だったようで。


確かに埼玉県ディスり映画ではあっても、作中では埼玉を始めとする県ネタが多数散りばめられていて、そういう意味では埼玉県民だからこそ楽しめる映画でもありました。
そもそも埼玉県民は自県の中途半端さや特徴の無さからくる自虐ネタさえ楽しんでしまいますから。
やはりというか、上映としては埼玉県で人気なのも頷けます。*3
あまり肩が凝らずに気楽に楽しめたとも言えましょう。
市内では5/2まで上映ということですが、せっかくのGWなのでもっと延長してもいいくらいじゃないですかね。

*1:子供の頃だけど、アニメを見ていたし単行本も数冊読んだ

*2:父の着ているTシャツは”あついぞ!熊谷”の文字が

*3:日曜午前ということもあって、実際に席も混んでいた