13期・64冊目 『てのひらに爆弾を』

てのひらに爆弾を

てのひらに爆弾を

内容(「BOOK」データベースより)

都心で市民を狙った爆弾事件が発生。爆弾が仕込まれたのは携帯電話だった。所轄署から警視庁捜査一課特殊班に移った城辺直秀にとって、初めての事件だ。犯人は各携帯電話会社に「身代金」を要求するが、その後、動きを止めてしまう。狙いは何か。思わぬ手掛かりを掴んだ城辺は、真相に迫っていくのだが―。大ヒット『そして粛清の扉を』の著者が放つ、待望の長編サスペンス!

落ちていた携帯電話を拾って電源を入れた途端に爆発するという事件が都内で連続発生。
犯人は他にも爆弾を仕掛けていることを明かした上で携帯電話会社に金を要求する。
幸い死者はなく怪我人のみで殺傷力は低いものの、携帯電話というありふれたツールを使った脅迫事件だけに特殊班による対策本部が作られて厳重な体制で取り組みます。
しかし、便乗犯が出たものの、真犯人からは接触が失せてしまい、しばらくしてから別の会社の携帯電話で続けて爆発事件が発生するのでした。
いったい、犯人の狙いはどこにあるのか?
警視庁捜査一課特殊班の城辺刑事はプロファイリングの結果などから、犯人は単純な金銭目的ではなく、途方もない目的を持っているのではないかと探り始めるのでした。


章が変わって、孤独な女性の話。学校で酷い虐めを受けていた彼女は頭一つ飛びぬけて勉強ができたためになんとか抜け出せることができたが、対人関係に難があって就職もせずにアルバイトで過ごしていた。
そんな彼女がある夏の日に公園で出会った不思議な老人と子供。
子供はかつての自分と同じように母子家庭であり、学校で酷い虐めを受けていることがわかって・・・。


子供が安易に携帯電話を使うことにより、虐めの一環として掲示板などで誹謗中傷が書き込まれたり個人情報が拡散されている状況。
携帯電話会社がフィルタリングや子供用携帯電話など対応を行っているというが、それは建前上そうしているだけで実際は利用者の安全よりも儲け主義に走っている。
そういった現代の子供に対する携帯電話の危惧については理解はできる部分はあります。
それなのに大義のためには犠牲を問わないテロ*1に堕ちてしまい、最後は矢面に立った女性一人の自爆で終わってしまうという呆気なさ。
情報収集などの面でかなりの組織が動いている気配があるのですが、それらはブラックボックスとして一切明かされません。
主人公の城辺刑事にしても、同級生だったプロファイリングの専門家が登場したり、かつて検挙した犯人グループの残党に恨まれてしまったがために妻子の安全を図って一時離婚しているといった背景があるのですが。
結局それらは単なるエピソードに終わってしまい、終盤にほとんど関与しません。
そういうわけで長々と引っ張ってきたにしては、前後巻の前巻でしまったような中途半端な読後感でした。

*1:子供を爆弾の被害には遭わないようにはしているが、それでも関係ない市民が重傷を負っているし、社長の子供を脅迫のネタにしているのがどうにもおかしい