13期・57冊目 『精霊幻想記12.戦場の交響曲』

精霊幻想記 12.戦場の交響曲 (HJ文庫)

精霊幻想記 12.戦場の交響曲 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

シャルル=アルボー率いるベルトラム王国騎士団からの追っ手がかかるクリスティーナ王女一行を、ロダニアまで護衛することになったリオ。一騎当千の力を持つサラたちの協力もあり、一行は順調に追跡者たちから距離を稼いでいく。そんな中、クリスティーナは過去の自分を振り返りながら、正体を隠すリオに対して謝ることも出来ず、密かに胸を痛めていた。一方、リオたちをシャルルとは別経由で追うレイスは手駒を動かしながら、確実に包囲網を敷くべく謀略を巡らせていく―。

11巻]にて、セリアだけでなく、ベルトラム王国からの追手を撒きながらロダニアを目指すクリスティーナ王女一行の護衛をすることになったリオ。
折よく駆けつけてくれた精霊の里の三人(獣人サラ、ハイエルフのオーフィア、ドワーフのアルマ)にも協力してもらい、街道を避けて空を駆けながら距離を稼いでいきます。
途中の宿場町で冒険者たちに絡まれて、強引にねじ伏せることがあったものの、王国騎士団の捜索範囲から無事抜け出し、もう少しで国境を越えられると思ったところで、レイスが仕掛けた狡猾な包囲網が待ち受けていたのでした。


クリスティーナ王女一行の逃避行はweb版でも夜会編(名誉騎士叙任と美春との別れ)の後に書かれていました。流れ的には前後していますね。
大まかな流れは踏襲しつつも、書籍版では大胆に改変されているようです。
違いの一つはベルトラム王国勇者である瑠衣とリオが面と向かって戦うところ。
瑠衣の召喚にあたって巻き込まれた二人(エイタとレイ)がなぜ瑠衣と袂を分かったのかが気になるところですが、いずれ明かされるのでしょうか。
それから、リオがweb版よりも無双して、学園時代より因縁あったシャルル・アルボーが無様を晒したところは胸のすく思いでした。
後半がほぼバトルの連続であり、最後にリオが主人公らしい活躍を見せてくれました。
過去を悔恨するクリスティーナ王女の心情により、彼女とリオとの距離感は今までのヒロインとは違う形で描かれていたところは良かったですね。


気にかかった点としては、いくらリオ無双の舞台作りとはいえ、国境付近で待ち受けていた5000もの兵はどこから来たのかということ。
しかも場所が国境付近ということは軽々しく軍を動かして良い場所ではなりません。
数名ならばグリフォンに乗ってきたということになるだろうけど、時代背景的に5000人もの兵を動員するにはかなり時間がかかるはず…。途中まで捜索に使っていたのだとしても、集合に何日もかかるだろうし。
そのへんは何も書かれていなくて、ご都合主義と取られても仕方ないでしょう。
敵役は王剣・勇者・魔剣使いを中心とした少数精鋭でも良かったような。
それからレイス部下と精霊術使い三人娘との戦いの違和感ですかね。
敵が魔剣使いであると認めているのに最初から本気を出さずに手間取り、王女たちに危険を及ぼすことになったり。激戦の最中に長々と会話をしていたりと。
場面ごとの描写は丁寧だし、ちゃんとストーリーを考えているのだろうと思えても、やっぱり読んでておかしく思えてしまう個所があったのでした。