13期・49冊目 『不屈の海3 ビスマルク海夜襲』

不屈の海3-ビスマルク海夜襲 (C・NOVELS)

不屈の海3-ビスマルク海夜襲 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

空母三隻を撃沈された米国は、豪州領ビスマルク諸島に進出。ここを拠点とし、B17によるトラック諸島爆撃作戦を展開する。長距離爆撃が可能な機材を持たない日本軍は、水上砲戦部隊を投入。艦砲射撃でビスマルク諸島の米航空基地を破壊する策に出るが、米軍の基地設営能力は想像を上回る。幾度破壊しても再建される姿は、「不沈空母」と呼ぶべきものだった。一方、欧州ではドイツが英本土への上陸作戦に失敗。背後を窺うソ連にも不穏な動きが―。風雲急を告げる世界情勢の中、連合艦隊は「金剛」「榛名」を中心とした戦力を集結。夜陰に紛れ、要塞と化したビスマルク諸島を急襲する!

前巻にて機動部隊同士の戦いにて三隻の空母を失い、撤退した米軍は正攻法ではなく、外交でオーストラリアに圧力をかけてラバウルを含むビスマルク諸島を借り受けて、日本軍の要衝トラック基地へのB17による長距離爆撃をかける作戦に出ました。
今回は史実のラバウルガダルカナルもしくはポートモレスビー間の航空戦、それにソロモン海戦を彷彿させる激しい局地戦が生起するといった内容です。
日米が戦力が拮抗していたのが、消耗戦に巻き込まれてアメリカの物量に押されていく時期ですね。
本作ではイギリスとは不戦条約を結んでいるために南太平洋のオーストラリア方面を気にせずに済んでいたのに、ビスマルク諸島租借によって有力な航空基地が出現することに。
それに現時点では対戦闘機では抜群の強さを誇る零戦といえども、防御力重視のB17には分が悪いし、さすがにラバウルまでは遠すぎて充分な援護ができない。
逆に一式陸攻はワンショットライターの仇名通りに撃たれ弱い。
というわけでトラックは徐々に被害が出始めて、泊地としての安全が保てなくなっていき、日本軍が攻撃隊を繰り出して被害を与えてもすぐに基地は修復されてしまう。*1
このまま史実の轍を踏んでしまうのではないかというところです。


欧州方面ではドイツの第二次イギリス上陸作戦がイギリス側の用意周到さやアメリカの助勢もあって、見事に防ぎきりました。
上陸作戦が失敗したことによって、ドイツは東方戦線より航空戦力を引き抜いて守りに入りますが、万事に慎重なソ連は攻め込むまでには至りません。イタリアも枢軸寄りの中立の立場を固守しています。
ということでメインとなる太平洋方面は史実のソロモン海戦が場所を変えて再現されたかのような戦い。
ここでも田中頼三が水雷屋としての勘を働かせて勝利を掴みますし、昔は著者が嫌っていた栗田健男は意外に男を見せましたね。
相変わらず小口径多数砲が好きなようで、アトランタ級が卑怯なくらいに強さを見せたり、魚雷による大物食いといったいつもの描写で、安定はしているけど変わり映えはありません。
あとは、ようやくドッグ入りした戦艦大和の防衛と強化が楽しみですね。
航空優勢の時代にどういった活躍の場面をもってくるのか?
そろそろ本格的な海戦があるでしょうが、その前にトラックの守りを固めることになった日本軍がどういった戦術を取るのかが気になるところです。

*1:重機を始めとする設営能力の違いも大きい