13期・43冊目 『精霊幻想記11.始まりの奏鳴曲』

精霊幻想記 11.始まりの奏鳴曲 (HJ文庫)

精霊幻想記 11.始まりの奏鳴曲 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
嫉妬にかられた貴久の暴走に気づき、ギリギリのところで美春を救い出すことに成功したリオ。貴久の計画に協力していた亜紀の処遇も含めて話し合いがもたれる中、事件を起こした兄姉に複雑な感情を抱く雅人は、リオたちに今後の自分の身の振り方について相談を持ちかける。一方、リオは迷惑を掛けた実家の様子が気になるセリアを連れ、再びクレール伯爵領へと足を踏み入れるのだが、そこで思いがけない人物たちと遭遇し―!?

11巻から第2部開始となっていますが、前の10巻にて拉致された美春を助けるために宙を飛んで魔導船に乗り込み、貴久を叩きのめすという山場があったためか、今回はその後始末も含めて繋ぎ的な内容でした。
前半は事件を巻き起こした貴久と亜紀の処遇が長々と話し合われます。
決闘に敗れたというのに、貴久がリリアーナからの説得からも耳を背けて事件を起こした動機は現実を見ようともしない子供じみた我儘とリオに対しての嫉妬。
未遂とはいえど王城を騒がせた以上は極刑に処せられても仕方ないところを勇者という立場が複雑にしている。
なんというか、国王臨席の元で少年少女の痴情のもつれが引き起こした事件について話し合っているのが滑稽にしか見えません。
勇者の処遇がそれぞれの国としても重要であるという設定があって、かろうじて話が成立させているとも言えます。
そういうわけで、前半は特に会話シーンが多くて、しかもその中身はいつもの繰り返しで面白味には欠けます。
あえてみどころがあるとしたら、精神的な成長を見せた雅人でしょうか。
はっきりいってリオ以外の男性の登場人物は敵か引き立て役ばかりだったところに幼いながらも格好良いところを見せてくれました。
とはいっても、貴久と亜紀のお目付け役としてセントステラ王国に去ってしまったので、しばらく出番はなくなってしまうでしょうが。
女性陣の中ではシャルロット王女というやり手キャラクターがいい刺激を与えてくれていると思います。それでもリオの壁は突き破れないでしょうが(笑)


後半はセリアを伴って密かに実家に戻り、父親に会わせるために地下から侵入したところで、クリスティーネ王女と再会。
転移に巻き込まれた日本人少年二人を連れて、逃避行の最中であったという。
このあたりはweb版の流れを踏襲しています。
ただ、追手に勇者・重倉瑠衣が加わっていることで、リオとの戦いに多少は彩が加わっているかな。
城門から出たクリスティーネ王女やセリアたちに迫る魔物たち。そこにサラ、アルマ、オーフィアの三人が見事な戦いぶりをみせたことで、ただリオについてきただけじゃなくて見せ場を作りましたね。
でもやっぱりいいところはリオが持って行ったかな。
リオのことを想っていながらも積極的な行動に出られない妹フローラ*1よりも、姉であるクリスティーネの方がしっかりとした性格で好ましい気がしてきました。
さらにリオに相対したレイス。
正面切って戦うことになるのはいつの日になるのやら。

*1:美春とキャラが被っていて存在感が薄い