13期・38冊目 『不屈の海2 グアム沖空母決戦』

不屈の海2-グアム沖空母決戦 (C・NOVELS)

不屈の海2-グアム沖空母決戦 (C・NOVELS)

内容紹介

公試中の「大和」沈没という逆境の中、ハワイ沖海戦に勝利した第一航空艦隊。日本はその勢いのまま南方作戦を完了した。作戦の第二段階として、連合艦隊首席参謀・澄川道男は温存されている米空母の撃滅を提言。敵機動部隊を誘い出すために採った秘策とは――。一方、米国はイギリスに再三の対日参戦を要求するも、対独戦の激化を背景に拒否を受ける。ソ連も対独参戦を保留し、欧州戦線は膠着する。痺れを切らした米太平洋艦隊は戦力を集結しての反攻を開始。グアム沖にて、史上初の空母決戦が幕を開ける!

1巻にて、史実の真珠湾攻撃と違って洋上での海戦となり、偶然も重なって米太平洋艦隊の主力戦艦のほとんどが洋上で沈められたため*1、艦だけでなく貴重な人材まで多くを喪うこととなりました。
蘭印やフィリピンを占領して順調に南方作戦を進める日本軍。一度上陸を許したこともあって史実以上にドイツ軍の脅威を感じているイギリスとこれ以上敵を増やしたくない日本との利害が一致して不可侵条約を結んだため、アジアの英領に対しては警戒レベルで済ませていました。
高知の宿毛湾にて試験航海中の戦艦大和を仕留めたものの、その後に大損害をくらった米軍は新造艦船と大西洋からの回航でハワイに増援を送るのですが、日本軍の嫌がらせのような攻撃を受けて、次第に海軍への風当たりが強くなり、政治的な要請から大規模攻勢をかける必要が出てきたのでした。


新鋭飛行艇である二式大艇による長距離夜間爆撃に港口への機雷設置、潜水艦による砲撃など。
この世界ではアメリカだけを考えればいいといういことも関係してか、日本軍にしては珍しく搦め手による攻撃が功を奏している状況が描かれています。*2
イギリスやソ連を参戦させようという外交手段が実らなかったこともあり、成果を出す必要にかられた米軍はかき集めた空母5隻で打って出ることになります。
その標的はGF主力たる空母6隻。
早くも太平洋戦争における主力となった機動部隊同士の激突という熱い展開となって、期待が高まります。


占領海域の中でも外縁に位置するウェーキやマーシャルに来寇することを想定していた日本軍の想定を裏切って、一躍マリアナ諸島まで迫った米軍機動部隊はグアムやサイパンの基地を蹂躙します。
急ぎ停泊していたトラックから出撃した日本の機動部隊ですが、迂回路を取ることをハルゼーは予想しており、先手を取られてしまうのですが・・・。


まだ序盤戦なので、ミッドウェイのように日本が惨敗することはないだろうという安心感はありましたね。運が日本軍に味方した感はありますが、三隻撃破されたのに対して三隻撃沈したので充分な戦果と言えましょうか。
まぁ、予定調和ともいえなくはないかな。
航空専門家で猪突猛進たるハルゼーと、専門外ということもあって慎重な南雲忠一との違いが偶々日本側に傾いたとも言えましょうか。
本シリーズの世界観は微妙な外交バランスの上に成り立っているので、そこがどう転ぶかで史実をなぞるか、それとも大きく外れていくかが今後気になるところです。
最後になって、ようやくアメリカはオーストラリアを動かした模様。同盟とまでいかなくても、基地を租借したのかな。
フネが無ければヒコーキを出せばいいってことで、B17を繰り出してきた米軍。
持ちたる国は羨ましい。
ここで苦戦しているようだと、そのうちエセックスおよびインディペンデンスシリーズが続々と竣工されるわけですが、この試練にどうやって立ち向かうかが次回以降の楽しみではあります。
今までの著者の例からして、突飛なものは出さないけど、ソ連中立ゆえにドイツからの技術交流が盛んになっているので、B17対策として鍾馗雷電を強化したような迎撃機が出てくるんじゃないかと予想。

*1:日本側は5隻と認識しているが実際は6隻

*2:ただし史実通りに小型潜水艦による真珠湾内攻撃は失敗