13期・34冊目 『遊星小説』

内容紹介

中途半端にリアルなウサギのぬいぐるみラビラビは、
大事な香苗ちゃんを地球に残して宇宙へと旅立っていた。
乗り込んだ衛星の外に見えるのは彼のライバル・ピエロの人形。
今日も熾烈で珍妙、決して負けられぬ戦いが幕を開ける!? (『大銀河三秒戦争』)

この切なさは宇宙を超える――こわくて、かわいい。懐かしくて、何だか切ない。
ノスタルジックなあの日の光景、昭和時代のあたかかなかおり、レトロで、
しかし色あせない思い出……ホラーにSF、ミステリー。
直木賞作家がおくる、傑作「超」ショートストーリー集!

著者の持ち味である昭和を舞台とした、ちょっと不思議でユーモラスだったり、怖かったり、切ない内容といったショートショートが32編も収められている短編集。
喋るうさぎのぬいぐるみのラビラビやUFOや幽霊など不可思議現象をいっぺんに写してしまう後輩の話、怠け者の専業主婦だった母さんが隠していた話など、続きものもあります。
やはり、ラビラビシリーズのような心暖まる話はいいですね。
不都合な真実」シリーズも昭和特有の不思議さを逆手に取った内容で笑えました。
昭和特有といえば、恐竜図鑑をモチーフにした「あなたの、古いともだち」は昭和の小学生時代を過ごした男性ならば共感できるかもしれない。
かと思えば「蚊帳の外」のような話はショートショートならではの短いながらも重い余韻が残りますね。
失恋した友達との馬鹿話「春だったね」には青春時代を思い起こされました。
どこか非日常的な雰囲気を醸し出していた「赤い月」の主人公は若くして亡くなった詩人の中原中也のようですね。
「ニセウルトラマン」は男同士での特撮ウンチク話から兄弟の泣けるへの展開が良かったですね。
うちでも猫を飼っているだけに「傷だらけのジン」は切なかったです。不器用な野良猫の生き様といったら仕方ないんですけど。
実質最後の「秘恋」は厳格で口煩い祖父のささやかな秘密*1に触れる話で、主人公の勘違いもあって、微笑ましかったですね。
もっと長く読んでみたい。そう思わされるものもありましたが、ショートショートだからこそ良いというのもあるんでしょうな。

*1:可憐な女性が写った写真