13期・27冊目 『不屈の海1 - 「大和」撃沈指令』

不屈の海1 - 「大和」撃沈指令 (C・NOVELS)

不屈の海1 - 「大和」撃沈指令 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

一九四一年十二月七日、真珠湾攻撃の前日。宿毛湾では戦艦「大和」の公試運転が行われていた。世界最大最強の戦艦がその偉容を示す中、海面下には不穏な影が蠢いていた。一方、欧州では空前の好景気に沸くイタリアが参戦を拒否。大西洋では米駆逐艦Uボートを撃沈し、米独戦の火蓋が切って落とされた。緊迫する世界情勢の中、真珠湾に向かう帝国海軍第一航空艦隊は、航行中に米太平洋艦隊に捕捉されてしまい―。日本は絶体絶命の窮地を覆すことができるのか?「大和」なき皇国の反攻を描く新シリーズ、ここに開幕。

横山信義氏の新シリーズ。
やっぱり、今回も第二次世界大戦でした。
ここまでくると、よく仮想ネタを考えつくものだと思います。
今回史実と大きく違う点(欧州情勢)。
・イタリアが参戦せずにドイツの軍需工場と化している。そのおかげで国内は空前の好景気に湧いている。さらに”砂漠の狐”退場もあって、アフリカ戦は発生しない模様。
・ドイツがバトル・オブ・ブリテンに一応勝利しアシカ作戦を発動するも、英軍の猛反抗により大損害を出して失敗。勝利続きだったドイツ軍の初めての大敗北となる。ヒトラーソ連に向かわずにイギリス屈服に執着するか?
・対英支援のアメリカ艦隊が監視していたUボートから魚雷を放たれたと判断し、反撃して撃沈させる。これをもってアメリカがドイツに宣戦布告。


そして、満を持して作り上げた最新鋭戦艦「大和」の存在がアメリカに筒抜け(主砲口径は除く)になっていて、宿毛湾での公試運転中にフィリピンから出撃したハルゼー率いる機動部隊に奇襲を受けてしまうのです。
戦闘を想定していなかったために6発魚雷を受けた大和は危ういところを浅瀬に乗り上げて座礁します。
公式な宣戦布告前の武力攻撃ですが、これが戦争ではなく日本の一連の行為に対する武力制裁だとのたまうアメリカの強弁。さすがで”正義の国”ですねぇ。ハンパない。
普通ならば荒唐無稽と思うところが、実際に戦後にも似た行為をやらかしているから、違和感ないように思えてしまいます。
一方、真珠湾を目指していた南雲機動部隊は警戒中の潜水艦に発見されてしまい、奇襲ではなく、出撃したキンメルの太平洋艦隊との遭遇戦となり、あわや戦艦による空母の攻撃を受けようかという危機を迎えていたのでした。


史実とのちょっとした選択の違いがより大きく波及していく。
まさに架空戦記のみどころ溢れた内容でした。
陸上攻撃用の爆弾を換装する間もなく迫りくる戦艦を攻撃したことが、かえって思わぬ効果を発揮して、史上初の洋上にて戦艦を航空機で撃沈する快挙をあげられたのも面白かったです。
運不運の違いもありますが、大和と太平洋艦隊の戦艦群はそのままそっくり史実の運命を反転させたようでした。
ということで、1巻を読んでみて充分満足できる内容でしたね。
今後気になる点としては、まずドイツの出方(対英米戦に絞るのか、ソ連とは?)。
まだ南方作戦は実施されていないこともあって、実は日英は戦争状態になく、中国とも停戦状態。ということはこのまま日米のみの戦争となるのか?
そしてもちろん、浮揚修理して防御が強化された大和の復活ってところ。
それに開戦劈頭の一連の戦いから、より航空戦重視に傾斜していくんじゃないですかね。
定番の戦時量産型空母(雲龍など)だけでなく、零戦の後継機にも手が入ることでしょう。
ただし、今までのシリーズで散々やってきたことでもあるので、どういう違いを見せてくれるか期待しています。