13期・10冊目 『精霊幻想記10 輪廻の勿忘草』

精霊幻想記 10.輪廻の勿忘草 (HJ文庫)

精霊幻想記 10.輪廻の勿忘草 (HJ文庫)

内容紹介

遂に公の場で、前世由来のアマカワ姓を名乗ると決めたリオ。その姓に沙月やリーゼロッテが強く反応を示す中、美春は幼馴染である天川春人がリオの前世であることも理解した上で、自分の気持ちは変わらないと訴える。それに対してリオは、自分と天川春人を同一視するべきではないと美春を諭すが――「美春は騙されている。なんとか、なんとかしないと……」第三者による介入で、話は更に複雑化していき……!? WEB版とは異なる展開から目が離せない《夜会編》、最高潮へ!

流れ的には前巻から引き続き、各国の勇者お披露目を兼ねた夜会の後編となります。
ガルアーク国王より名誉騎士の称号を賜り、前世の苗字であるアマカワ(天川)を名乗った主人公(地の分では本名のリオだけど、公式にはハルトを名乗っているので、前世と同じハルト・アマカワになる)。
すでに前世のことを話して入学式に面識があったことがわかった沙月、そして美春とともに岩の家に残した亜紀・雅人を含めて身の振り方を秘密裏に検討していきます。
すでにリオと共にいることを表明した美春ですが、亜紀・雅人の二人が兄である貴久と共に行くとなると、彼が勇者召喚されたセントグラ王国は遠距離にあり鎖国に近いこともあって、またいつ会えるかわからない。
基本的に本人たちの意思を尊重したいというリオですが、よく話し合ってもらうためにこっそり美春を連れて岩の家に戻ることにします。
一方で勇者召喚以来、ようやく美春たちに会えて喜ぶ貴久ですが、自分を蚊帳の外にして沙月・美春がハルト(リオ)と話をしている様子が気になって仕方ない。
かといって、王族貴族に敬意を払われるハルトには勇者といえども強く出ることもできず、もやもやとした気持ちを抱くのでした。


前半は夜会におけるそれぞれのペアのダンスだったり、恒例の美女(今回は王女)に囲まれてのお茶会でちやほやされるリオだったり、今後の身の振り方を決めるための三人(リオ・美春・沙月)の内緒話だったり、そこに介入しようとする貴久だったり。
今までリオが関わった女性たちがちょっとずつではあっても登場してきました。正直要らないと思えた部分もありましたが、10巻という区切りの意味もあったのでしょう。
個人的には肩のゴミを取るふりをしてクリスティーナ王女が妹フローラを助けた礼をこっそり言うシーンとイラストが良かったですね。
主人公を慕う女性が多すぎて収まりがつかなくなりそうな気がしつつも、今回目立ったのは策謀好きっぽいガルアーク王女シャルロット、そしてもちろんWeb版と違って強い決意を秘めて行動に出た美春でしょう。Web版よりもちゃんとヒロインしてる。
あそこまで言われても、今の自分は前世とは違うだの(戦闘行為や正当防衛とはいえ)殺人を犯して汚れているだの云々で受け入れないのはさすがにヘタレすぎます。
沙月でなくても怒ることころでしょう。
というか、沙月との存在無しでは二人がここまで気持ちを伝えあうことなかっただろうなぁ。もちろん以前からのアイシアのフォローも活きていました。
その代わりに沙月もリオに惹かれてしまった気がしてなりませんが。
結局、話し合いの際に共に行くことを選んだのは亜紀のみ。美春と雅人は引き続きリオと共に過ごすと聞いて承服しきれなくなった貴久は模擬戦を申し込みます。
そこで敗北するも諦めきれず、美春に執着する貴久は亜紀の協力に加えて王女を半ば脅して巻き込み、奪取する計画を立てて…。


やはりWeb版では離れ離れになったままフェードアウト気味となった美春との関係が書籍版ではきちっと解決したのが一番ですね。
長々と引っ張ってきましたが、転生した主人公と巻き込まれ召喚されたヒロイン。幾重の意味で引き離された二人がようやく新たに始まられることになったのだと思うと感慨深いです。
それにしても、坂田弘明にしても、今回の貴久にしても人間として未熟すぎて主人公の引き立て役にしかなっていない。
いったい勇者とはなんなのか。
まぁ、いずれ魔王を倒す実力を秘めているものの、いまだレベルは一桁台で圧倒的に経験が足りてないってことなんでしょうかね。
気になる点としては、悪堕ちした亜紀との和解は後日あるのか?*1
美春拉致を黙認した気配があるシャルロットは王族らしい解決手段を考えていたのかなってところですね。改めて惚れてしまった彼女の攻勢が始まりそう…。

*1:離婚は母親の不貞が原因なので、子供である春人・亜紀には和解が成ってほしい気がする