13期・6冊目 『焦茶色のパステル』

内容紹介
ミステリー界の至宝はここから誕生した。
二人で一人の作家、岡島二人のデビュー作にして江戸川乱歩賞受賞作。
東北の牧場で牧場長と競馬評論家・大友隆一が殺され、サラブレッドの母子、モンパレットとパステルが銃撃された。隆一の妻である香苗は競馬の知識は一切持っていなかったが、夫の死に疑問を抱き、次々と怪事件に襲われる。一連の事件の裏には、競馬界を揺るがす恐るべき秘密が隠されたいた。

東北の幕良という牧場で競馬評論家の大友隆一が牧場長と馬二頭(うち一頭が仔馬のパステル)と共に猟銃で撃たれて死亡。
妻の香苗がその報を受け取って愕然とし、取る物もとりあえず現場に駆けつけようという出だしです。
隆一は完全な仕事人間で夫婦間は冷めきっており、離婚間近でした。
夫の無残な遺体を見た香苗は愛情としては冷めていたものの、やはり妻として悲しみに暮れてしまい、夫がどうして死ななければならなかったのか、友人たちの協力を得てその理由を探っていくというストーリー。
事件前にパステルの売買の話があり、それを聞きつけた隆一の不可解な言動。
隆一と会ったばかりの獣医学講師の不審死。
事件前に牧場長の乗る車のブレーキパイプが切られており、何者かに狙われていたという話。
香苗がアパートに帰宅すると、何者かが侵入した形跡があったこと。
事件前にいろいろと不審な点があったものの、それぞれがどう結びつくのかははっきりしません。
ただ、隆一は何らかの陰謀に巻き込まれたのではないかという推測だけが独り歩きするのでした。


実際のところを言いますと、私は競馬に行ったこともないし、興味もありません。
まぁ、競馬というよりサラブレットの毛並や血統が作品の肝となっていて、牧場における育成の方が重要となります。そのあたりは作品内の会話で競馬ど素人の主人公でもわかるように説明されているので、競馬の知識があってもなくても問題ないでしょう。
主人公である香苗ですが、どちらかというと受け身の性格で夫の仕事(競馬)にまったく関心は無かったのですが、競馬誌の女性記者である友人・芙美子によって、がんがん引っ張られていきましたね。
はっきりいって、破天荒な行動的美人である芙美子がいなきゃ、事件解決に至らなかったのでは?と思うくらい。
まぁ、香苗も牧夫や牧場長の家族から話を聞いたりと地道にサポートしていましたが。
様々なヒントから可能性を探り、少しずつ真相に迫っていくというミステリの王道として楽しめました。
悪の黒幕が捕まったと思いきや、真犯人は意外に身近なところにいたという点も違和感なく受け入れられます。
タイトルは事件の中心になった仔馬のことを指しているのはもちろんですが、読了した後にその意味合いがぐっと深く感じられるようになりました。