2期・54冊目 『精霊幻想記9 月下の勇者』

精霊幻想記 9.月下の勇者 (HJ文庫)

精霊幻想記 9.月下の勇者 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

転生者であることを打ち明けてくれたリーゼロッテの協力の下、夜会の前に皇沙月との謁見機会を得たリオと美春。準備を整え、夜会の開催地である王都ガルトゥークへ赴いたリオたちは、遂に捜し求めていた沙月との邂逅を果たす。再会を心の底から喜び合う美春と沙月に対して、リオは今後の行動方針について話を切り出すが―「私は…ハルトさんと一緒にいたいなと思っています」様々な想いが交錯する“夜会編”、ここに開幕!!

8巻からの流れで美春と亜紀・雅人姉弟の顔見知りである、ガルアーク王国の召喚勇者の皇沙月(すめらぎ・さつき)に面会させる手続きをリーゼロッテの協力で進めていくことになりました。
その合間に夜会で出席するための衣装を新調するなど準備を経て、魔道船に乗った一行は王都に到着。リオ(ハルト)と美春はリーゼロッテの両親・兄との面談を通してクレティア公爵家にも客人として遇されます。


次いでガルアーク国王との非公式な面談があり、そこで王子と王女、それに美春にとっては異世界に来てようやく沙月との対面となったのでした。*1
沙月の一方的な宣言で彼女の部屋に泊まることになったのは、深夜にこっそり彼女をリオの家に連れていくため。空中から城を抜け出し、岩の家にて亜紀・雅人との再会が叶ったのでした。
そこでセリア先生やラティーファを含む留守組との歓談や温泉入浴を楽しんだ沙月。
一方で美春や亜紀・雅人にとっては、セントステラ王国の召喚勇者である兄・貴久と再会した際に身の振り方(リオと別れ、兄と共にセントステラ王国に行くか?)を考えておく必要が出てくるのでした。


今回は沙月とシャルロット王女の二人の女性キャラが際立っていましたね。
沙月は高校で生徒会役員を務めていたことから、しっかり者でありながら奔放な性格も見られましたし、シャルロットは可憐な見た目とは裏腹にかなりしたたかなところを見せつけました。どこまで本気なのか演技なのか判断しにくいですねぇ。
どっちも賢さを見せつつ、やっぱりリオに少なからず好意を見せるようになるのはお約束ですな(笑)
ただ、夜会までの道のりがどうにも冗長的で退屈に感じました。
丁寧な描写を心掛けているので、手順として踏んでいく必要があるのはわかるのですが、女性陣に大モテ&偉い人に褒め称えられるリオ。ただただ感情を抑えこんだような控えめな態度を貫き通す。そういった場面が何度も続き、似たような表現が繰り返される。
一種のハーレムなのに、まったくそう感じられない。主人公含めてほとんどの男性が影薄く、リオの周囲の女の子たちがひたすらきゃっきゃっと賑わっているだけの印象が残ってしまうんですよね。


さて、各国の勇者お披露目を兼ねたガルアーク王国の夜会ですが、大筋はWeb原作に近く、乱入者たちをリオの圧倒的な活躍で退け、ガルアーク王によって一代限りの名誉騎士に任じられるところ、そこで姓を決める際に前世と同じ「アマカワ」と決めたところまでは同じです。
大いに違っているのは美春が自身の失踪後の春人の記憶をアイシアに視せてもらい、今後何があってもハルトと一緒にいたいと決意した上でその場所にいたということ。
巻き添え召喚組の今後の身の振り方を決める中で、美春に想いを寄せているのが明らかな貴久の暴走っぷりも予想できまですが、肝心の美春の中の感情が定まっているので、ただひたすら鬱だったWeb原作とはまったく違う展開が予想できます。
そういえば、Web原作ではかなり早い段階での夜会でしたが、ストーリーが分岐した書籍版では美春がちゃんとヒロインしていることに加えて、リオの前世の記憶が生かされているのがとてもいいと思えます。
その分、別々の勢力に分かれてしまったクリスティーナとフローラのベルトラム王女姉妹が不幸になっている気がしますね・・・。

*1:原作の方では春人と沙月は面識無かったような気がするけど、書籍版の今巻ではプロローグに出会いが描かれている