12期・53冊目 『ドミノ』

ドミノ (角川文庫)

ドミノ (角川文庫)

内容紹介
些細な事件が大騒動に発展していく、パニックコメディの大傑作!
一億の契約書を待つ生保会社のオフィス。下剤を盛られた子役の麻里花。推理力を競い合う大学生。別れを画策する青年実業家。昼下がりの東京駅、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが倒れてゆく!
Oh,My God! ! 怪しい奴らがもつれあって、東京駅は大パニック!

1億円の生命保険の契約書を八重洲支社に持ち帰ろうとしたところで電車が止まってしまった営業マン。
ミュージカルの子役オーデションに応募した少女はライバルの母親からもらったカルピスに下剤が盛られていて、腹痛に苦しむ。
ミステリサークルの次期幹事長を巡って争う大学生の男女は映画の犯人当てを競うも、どちらも外れて次の課題に取り組むため東京駅へ。
付き合っていた恋人との別れに揉めて、従妹に恋人の代役を依頼した青年実業家。
次の映画製作のために来日して東京ステーションホテルに宿泊していた映画監督。そして逃げ出したペット。
地方から出てきた老人は俳句サークルの仲間との待ち合わせするために東京駅に着いたが、途方もない広さにどこへ行っていけばいいのかわからなくなる。
そして同時多発爆破テロ計画を目論むテロリストたち。


始めの方こそあまりの登場人物の多さに掴みどころがわかりにくかったのですが、鍵となるのが偶然同じ柄だった複数の紙袋。
それぞれの中身は一つはOLがデパ地下で買ったお菓子、一つは老人が俳句仲間のために用意した土産、一つは着替えを入れるため、そしてもう一つは試作爆弾。
それがささいなことから持ち主が入れ替わっていくごとに騒ぎは大きくなっていくのです。
強烈な個性を持つ登場人物は何人もいますが、どちらかというと重要な部分を担っているのはごく普通の人だったりするのが面白い。
それぞれが自分の目的(紙袋)を求めていく内に見知らぬ人物同士で意図して、あるいは意図せず絡みだしていく流れについ惹きこまれていってしまいます。
やがてそれは東京駅という巨大ステーションを舞台とした大騒動へ。
いったい何が、どうして、どうなってしまうのかまったく先の読めないパニックストーリーへと発展していくところはさすがですね。
登場人物の多さとそれぞれが終盤に向けて見事に収斂してゆくさまは三谷幸喜映画を彷彿させます。
どこか映画で見たことあるようなコメディ風なシーンを使っているせいもあるかもしれませんね。








(以下ネタバレあり)


個人的には麻里花が苦しみの中で見せた奇跡の演技、その後にライバルの玲奈と友達になったこと。二人が人質となっても冷静に協力しあったシーンあたりが好きですね。
テレビに映ってちゃっかり宣伝してしまうところが笑わせます(しかもスポンサーのライバル会社が協賛しているのに生放送してしまったところまで)。
フィリップ監督のペット・ダリオについては彼が隠していたことから犬のような普通の動物じゃないとは思ってました。紙袋に入りたがることから猫科、それも希少な種類かと思いましたが、まさかイグアナだっとは…。
騒動を目にしたフィリップ監督のインスピレーションが乱発し、次期作品がどんなトンデモ映画になるのか不安ですね(笑)