12期・34冊目 『旭日、遥かなり6』

旭日、遥かなり6 (C・NOVELS)

旭日、遥かなり6 (C・NOVELS)

内容紹介

戦艦「大和」の活躍により、連合艦隊はメジュロ沖海戦に勝利。さらに海戦の隙を縫い、「武蔵」はタラワ環礁に大打撃を与えることに成功した。両国にらみ合いが続く中、突如クェゼリン沖に敵空母が出現。米軍の新型戦闘機F6F?ヘルキャット?の圧倒的性能に、日本軍航空隊は苦戦を強いられる。空中における零戦優位の時代が終わる中、山口多聞中将は軍令部にある奇策を提言する――。日米の戦いに急展開。待望のシリーズ第六弾!

マーシャル(日)とタラワ(米)の間で行われた海戦は日本側が勝利し、戦艦の艦砲で存分に基地を叩くも、機械化された設営能力に優れる米軍は短い期間で修復し、すぐに航空攻勢に出ます。
更に新型艦戦F6F(ヘルキャット)により、零戦の優位も崩れて、このまま史実のラバウルガダルカナルのような航空消耗戦に巻き込まれて、ずるずると敗北への道を辿るかと思えたその時、軍令部次長に就任した山口多聞中将の献策によって、思い切った手段に出ます。
それはマーシャル周辺を放棄し、トラック・マリアナを中心として密度を高くした絶対国防圏構想。
ただ、今のままだとタラワ環礁の米軍が見逃すわけがないので、まずは敵に打撃を加えることが前提となり、GFの総力をあげた出撃となりました。
それを迎え撃つ米軍もエセックス、インディペンデンスといった新型空母の運用が可能となり、数的には劣勢ではあるものの、少しでも日本の国力を削るために出撃することになったのでした。


今回は戦艦「武蔵」による基地砲撃を除いて水上戦はなく、航空戦がメイン。
ついにF6Fが登場。零戦はエンジン強化された32型が出てきたとはいえ、苦戦が免れません。
ただし、いくら艦船や航空機が補充されても、相次ぐ敗戦によって米軍は人材が減って新人の割合が多くなっているので、まだ圧倒的に不利というほどでも模様。
日本軍の奮闘ぶりがよく描かれています。
以前のシリーズではその点が無視されて、いくら敗北を重ねても強くなっていく米軍というバランスの悪さが見られたことがありましたが、さすがに近年はそこも考えているようですね。
もっとも、米軍の対空能力の高さは相変わらずのため、日本軍の航空人員の損耗も上がっている気がします。
戦闘機は間に合わないかもしれないけど、そろそろ艦爆・艦攻あたりは新型に変わっていてもいい頃です。


自ら引いての絶対国防圏はよくぞ実現したものだと思います。
戦況優勢な状況ではたいそう抵抗がありそうですが、これくらいやっておかないとまともな戦はできないし仕方ないですね。
もう一つ意外だったのはある重要人物の戦死。
後継者はどうするのだろうという問題が残ります。
ロシア方面も大胆に動きました。
ソ連崩壊で四か国同盟の行方も先行き不透明になってきましたね。
太平洋方面は絶対国防圏を巡っての攻防として一大海戦が起こるとして、幕引きとしてはやっぱり世界的な変化が影響して、といういつものパターンになりそうな?