12期・33冊目 『邪し魔』

amazonで中古で買ったのに、なぜか投稿時に検索しても出てこないので、とりあえず楽天のリンクを貼っておきます。

内容(「BOOK」データベースより)

単身バリで女三昧の生活をおくる良治は、祭の夜に禁忌を犯して村を追放され、少女イェニのもとへ。一方、良治が行方不明になったという知らせを受けた妻の恵子は、原因不明の頭痛に悩まされながらもバリに向かう。次第に現実と異界の境は崩れてゆき…

長年、バリ島でダイビングのインストラクターをしている良治は客の女性はもちろんのこと、地元の娼婦の娘とも数多く情を交わして、面白おかしく暮らす日々を送っていました。
そんな中で金融機関で真面目に勤めて30歳になるまで男を知ることなく、一念発起してバリ島までやってきた恵子と出会い、当然のように肉体関係になります。
良治は遊びのつもりであっても、恵子には運命の恋であり、そのまま押し切られて結婚することに。
夫婦揃って福岡でダイビングショップを経営することになったのですが、良治が一人の女に縛られる暮らしに耐えられるわけがなく、オフシーズンである冬の間に稼いでくると言って、単身バリ島に行ってしまいます。
仕事の合間にすることと言えば、やはり酒と女の日々。
ある日、地元の友人の帰郷に付き合って盛大なオゴオゴの祭りを見物した後、ニュピという外出やさまざまな活動が制限される日において、良治はイェニという一人の女性を出会い、その魅力に取りつかれてしまいます。
情欲にままに路上で裸になって交わってしまったために禁忌に触れたかどで良治は地元民のリンチに遭って叩き出されるのですが、イェニの家で匿われて、そのまま森の中の隠された楽園の生活を満喫します。
一方で、良治が行方不明になった知らせを受けた恵子はバリ島まで来たのですが、予想以上に奔放で色狂いの夫の行跡を知り、嫉妬に怒り狂うのです。
怒り狂ったあまりに生霊と化した恵子は霊視によって、良治がイェニと暮らしていることを知り、さらにイェニがただの人間ではないことまで看破。
夫を奪還するために良治が失踪した村まで乗り込むことになるのですが…。


久しぶりに読んだ友成純一の作品。
前半は作者自身のバリ島滞在経験を下敷きにしたと思われる、良治の自堕落な生活と共に現地の詳しい状況が描かれます。
そして後半は一人の男を巡って女二人の人智を超えたというか、人外パワーが炸裂する戦い。
正直申しますと、前半は確かに現地バリ島民の生態・習慣がよく描かれているのですが、ストーリー的にはいささか脱線が長くて冗長的に感じました。
後半はいよいよインドネシアの妖怪をモチーフにした人外バトルとなって、作者らしく血湧き肉躍るというより、血しぶき舞い、肉がちぎれる様相を見せます。
まぁ、過去の作品と比べると、ややおとなしめと言いましょうか。
スプラッタホラーというよりコメディを感じさせるような気がしますね。
それも、良治がとことん情けないからかもしれません。
ボンクラ男の良治と、そんなのに引っかかってヒステリーをこじらせた恵子にあまり良い印象を抱けなかった分、もともとは地上に降りた天女*1で、人間の男に捕らわれて無理やり夫婦にされた末に妖怪と化したイェニの由来に悲哀と共に魅力を感じられましたね。

*1:羽衣伝説を思わせる