12期・11冊目 『精霊幻想記7 夜明けの輪舞曲』

精霊幻想記 7.夜明けの輪舞曲 (HJ文庫)

精霊幻想記 7.夜明けの輪舞曲 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

レイスが操る魔物の大群に襲われていたリーゼロッテたちの一団を発見し、その戦闘へと加勢したリオ。圧倒的な力でもって次々と魔物を屠ってみせた彼に対し、その場に居た誰もが強い興味と関心を示す。またリオも更なる勇者召喚の情報を求め、貴族たる彼らと友好的な関係を築こうと動き出すが―「どうだ?俺はお前にとって、お望みの人間だったか?」「…ああ、ずっと探していた」その過程でリオは、追い続けてきた憎き男との邂逅を果たす!!

前巻にてレイスが操っていた魔物の大群がリーゼロッテの一行および偶然同行していた坂田弘明やフローラ王女、ユグノー公爵らを守る騎士たちと戦闘する場面に遭遇し、圧倒的な戦闘力を見せつけて撃滅したリオ(ハルト)。
本来の目的であったアマンドの街に変装済のセリアを連れていくことや他の勇者の情報を得られたのですが、リーゼロッテから加勢の御礼として、賓客として遇されることになります。
そこで貴族の放蕩息子たち(リオとしては学院時代に因縁のあるスチュアードやアルフォンス)とトラブルになるも、冷静に対処。
完全な言いがかりによる被害者であることや、先日の戦闘でリオの突出した能力を買われていたこともあって、高位貴族とは思えないほどへりくだった態度で謝罪を得ます。
そこで収まらないアルフォンスは内心の怒りをぶつけるためにも野外へ偵察に出る騎士隊に加わったのですが、そこにはレイスとルシウスが新たな素材集めのために待ち受けていたのでした。


Web版の流れとは分岐して、まったく独自の展開を見せるようになった書籍版ですが、Web版での設定をベースに活かして丁寧に話を展開しているな、というのが率直な感想です。
相変わらずのモテ度を見せる主人公と多くの女性キャラ(久しぶりの再会となったクロエを始めとする侍女たちが加わった)による日常的な会話が多く静かに進行する前半と比べて、後半は戦闘を中心として一気に盛り上げる。
因縁の対決のシーンも迫力ありましたし、*1一冊の本としてうまくまとめていますね。
登場人物が増えていく中で、Web版とは違う展開を見せながら、キャラクターとして齟齬が出ないようにするのが大変だろうなぁと思います。
安定のキャラクターぶりを見せる勇者・坂田弘明や、やっぱりもどかしいフローラ王女(笑)
フローラに関しては、最後の最後に秘密を知ってしまったこの後が非常に気になるところです。物語冒頭および学院時代に接点があった割にはただ周囲に翻弄されるだけの受け身で薄幸のヒロインでしかなく、物足りなさを感じる女性でもあったのですが、これを機に自身の殻を破ることができるのかどうかですね。
気になると言えば、時折登場する美春。精霊の里で精霊術の訓練に勤しんでいて、かなり上達をしている模様。これもWeb版には無かった独自色です。
アイシアとパスができたことで、リオとも精神的な繋がりができたし、このあたりが後の展開に活きてきそうな気がします。
ただ次巻で新たな勇者たちと顔を合わせることになりそうですが、Web版最大の鬱展開を引き起こした千堂貴久*2を始めとする召喚勇者たちとの出会い、そして精霊の里にすっかり馴染んだ美春や亜紀たちの処遇をどう料理されるのかが非常に気になるところです。

*1:あの結末はきっと奴が後の方で強力に変態して立ち塞がるパターン

*2:雅人の兄で、亜紀の義兄。美春に想いを寄せている関係でリオから引き離した