11期・63冊目 『『旭日、遥かなり3』

旭日、遥かなり3 (C・NOVELS)

旭日、遥かなり3 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

クェゼリン沖海戦に勝利した連合艦隊は、メジュロ環礁に潜む米太平洋艦隊主力を発見。戦力で上回る敵艦隊を減殺するために、一式陸攻による夜間攻撃を敢行する。連日の夜襲を受けた太平洋艦隊司令長官キンメルは、連合艦隊との直接対決を決意。ポナペ島沖にて、日米決戦の火蓋が切って落とされた!第一撃では駆逐艦黒潮」らの遠距離雷撃により、連合艦隊が戦局を有利に運ぶ。しかし、その裏には米艦隊の思わぬ策略が…。「ノース・カロライナ」「ワシントン」をはじめ巨大戦艦が勢揃いする米国に、「大和」不在の日本はいかに挑むのか!

前回にて前哨となる航空母艦同士の戦いでは3隻失った米軍(日本側も攻撃を受けて3隻損傷)ですが引くことなく、密かにクェゼリン環礁内を基地化して、補給や再編成を行っていました。
戦艦を始めとする艦隊戦力としてはまだ米軍の方が勝っていることもあり、太平洋艦隊司令長官キンメルは当然のように決戦に挑もうとしていたわけです。
敵艦隊の行方を伺っていた日本軍ですが、環礁内に停泊していると知り、艦隊決戦ではなく陸攻による長距離夜間爆撃により、少しでも戦力を削ろうとします。
すでに航空基地が完成して、日中は敵戦闘機による迎撃があるための夜間高高度爆撃でしたが、まぐれ当たりを除けばさほどの被害は出ません。
しかし、少しでも被害を避けようと環礁から外海へと出たところで潜水艦による雷撃があり、かえって損害を増やしてしまいました。
毎晩続く空襲に神経を擦り減らされた米軍は出撃を決意。
ついに決戦の火ぶたが切られたのでした。


いくぶんか冷や冷やさせられる部分もありましたが、日本軍が想定していた航空機と潜水艦による漸減作戦は概ね予定通りいった展開。
ようやく艦隊決戦となったわけですが、日本軍にとっての懸念は米軍が「ノース・カロライナ」「ワシントン」という条約明けの新鋭艦を出して、40cm砲艦を4隻揃えてきたのに対して見方は「長門」「陸奥」の2隻のみ。
「大和」が間に合わずに戦艦の数が劣勢であることでした。
まずは夜戦にて1万mという遠距離であっても、米軍の巡洋艦を大幅に削ることに成功。
主力に対戦では航空優勢を活かすべく、日中に仕掛けようとしたのですが、そこで航空艦隊に潜水艦が襲いかかり、航空機が出撃できないというアクシデント。
制空権を取られたままの極めて不利な中で不本意ながら時間稼ぎを図るのですが、業を煮やした米軍は高速の新鋭2戦艦を突出させて、戦いに引きずり込もうとしたのでした。


策を弄していたのは日本軍だけじゃなかったということで、わからなくなっていった戦いの帰趨。さすがにここで日本軍大敗は無いだろうとは思っていましたけどね。
陸奥」爆沈を含めてハラハラさせ通しなのは著者の真骨頂とも言えましょう。
現時点では最強兵器とも言える酸素魚雷にしても、当たり過ぎというほどでもなく、だけど当たったらとんでもない被害を与えるという点でバランスも取れていましたし。
そういえば、戦艦の数が多すぎて、伊勢・日向・山城・扶桑などの旧式戦艦群は空気でしたね。
ふと疑問に思ったのは、陸奥を除いた第一、第二の戦隊ごとに一隻ずつ集中攻撃していましたが、魚雷を受けて混乱している米軍艦隊にはもう少し細かく割り振れば戦果を増やせただろうにと思いました。それに30ノット発揮できる金剛以下の4隻には22ノットの鈍足米戦艦を追撃させれば良かったのにと。
まぁ情報が錯綜する戦場のことですから、そう簡単に効率よく動けたわけじゃないのと、基地航空隊に追撃を命じたからあえて戦艦は動かさなかったというのも有りえますね。


最後になって登場した二式大艇。そして攻勢をかけるロシア軍。
就航した大和と武蔵をもって対米早期講和を期する山本長官。
そう簡単にアメリカが屈するとは思えず、それに対して何らかの動きがありそうな大陸方面。
次回から新たな展開が見られそうですね。