11期・62冊目 『精霊幻想記6 逢魔の前奏曲』

精霊幻想記 6.逢魔の前奏曲 (HJ文庫)

精霊幻想記 6.逢魔の前奏曲 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

大貴族との望まぬ政略結婚から無事にセリアを救出したリオは、物資の補給と当初の目的であった“勇者召喚”についての情報を集めるべく、大都市アマンドを訪れる。その最中「父親に自分の無事を伝えたい」というセリアの願いを叶えるため、リオはクレール伯爵邸への潜入を試みることに!一方、セリアの結婚式に出席していた貴族令嬢リーゼロッテは、拠点であるアマンドへ戻る途中、ベルトラム王国の勇者・坂田や王女フローラらと予期せぬトラブルに巻き込まれてしまい!?

美春たちを精霊の里に預けたのがweb版との大きな分岐でありましたが、さらにもう一つがセリア先生を結婚式の最中に強奪してしまったことですね。
リオ(ハルト)の精霊術に呆気にとられるわ、岩屋の中の住居に招待されて、ふんだんに魔導具を使った設備の数々に驚かされ、リオとアイシアとの関係にドギマギさせられた挙句に3人一緒に寝ることに。
まさにセリア先生の魅力がふんだんに描かれているのが最大の特徴と言ってもいいんじゃないでしょうか。
魔法の天才として、幼くして学院の講師を勤めている早熟な部分がある一方で年頃の女の子らしい感性がまた可愛らしさを醸し出しています。
web版よりもリオとの関係がじっくりと描かれている点で、充分ヒロインとしての存在感も高まっていますね。そりゃまぁ貴族として家のためとはいえ、意に沿わない結婚から救い出されること自体がかなり心動かされるであろうイベントでありますからね。


美春たち3人についても精霊の里の住民とのほのぼのとした生活の様子や精霊術を会得してゆく様子などが描かれたのですが、少しだけリオの前世がほのめかされたり。
今回目立ったのは美春と妹・亜紀の春人に対する温度差ですかね。
すでに事情を知っているラティーファですが、リオから口止めされているために言い出せない。
そのあたりがいつ明かされるのかも気になります。


後半に脚光を浴びたのは公爵令嬢にしてアマンドの街を任されているリーゼロッテ。
邪龍の出現によって空を飛ぶ魔導船を途中で降りざるを得なくなり、そこでベルトラム王国の勇者・坂田弘明やフローラたちと出会い、アマンドまで同行することになってしまう。なんか今回はわがまま勇者に苦労させられている感じです(笑)
その途上で突然魔物の大集団に襲われてしまいます。
黒幕は帝国の外交官にしてその実態が謎の人物レイス。どうやらリーゼロッテが標的らしい。
護衛騎士団だけでなく、武装メイドたちの活躍も見られるも、ミノタウロスまでもが参戦してきて危機に陥る。
そこで我らが英雄リオが参上。さすが、おいしいところを持っていきます。


ところで、坂田弘明という青年は勇者に選ばれて非常に強力な武器を持つことができたことで舞い上がってしまっているのですが、実際は何の覚悟も経験もなく口先だけなので、今回は魔物の襲撃を受けて醜態を晒してしまいます。
だけど、なぜか嫌いになれないのは、彼の小市民的なところというか、ごく普通の人間が勇者として祭り上げられたら、ああなっても仕方ないって思えるからでしょうかね。
それに加えてレイスの目的ははっきりと明かされない上にリオの宿敵を呼び寄せてのアマンド襲撃を計画しているということで、今後が気になるところ。
フローラも変装したハルトに何かを感じているみたいだし、いったいどうなってしまうんでしょうね*1


ついに6巻まで来た本作。きりよく10巻なら後半に入るところでしょうが、未登場の勇者たちもいますし、まだまだ峠を越えたという感じがしません。
web版とはまったく別展開となって書く方は大変でしょうが、漫画化もされて人気出ているみたいなので、今後も頑張ってほしいところですね。

*1:web版では敵討ち後に再会するという展開だったけど、その前がいろいろ不憫だった