11期・41冊目 『旭日、遥かなり2』

旭日、遥かなり2 (C・NOVELS)

旭日、遥かなり2 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

中部太平洋の要衡、ウェーク島沖にて連合艦隊の空母「蒼龍」「飛龍」が、米巨大空母「サラトガ」と激突!史上初の空母戦が始まった。一方、ロシア南西部のバイカル湖では、日本と同盟を結ぶロシア帝国軍がソ連軍と交戦する。陸軍の奥沢少佐はソ連軍用車輌にアメリカ製軽戦車M3“スチュアート”を発見し、米国の物資援助の強化を認めた。対抗策として駐独大使・山下奉文は、ドイツ政府に対米参戦を求めるが…。緊迫する世界情勢の中、マーシャル諸島での邀撃作戦を狙う連合艦隊が、空母四隻を主力とする米艦隊と衝突する!

真珠湾攻撃がなく始まった本作の太平洋戦争。
1巻で描かれた南方資源地帯への侵攻とは別に中部太平洋のおいても日本軍によるアメリカ領の島嶼侵攻が行われましたが、最前線たるウェーク島攻略では守備隊の善戦によって思わぬ苦戦を強いられます。
そこでGFは一気に決めるために空母「蒼龍」「飛龍」を主力とする第二航空戦隊を派遣。
米軍も守備隊救援のために西海岸から回航されてきたばかりの空母「サラトガ」を向かわせ、ここに初の空母戦が始まったのでした。
互いに島と空母という二つの目標を持っていましたが、ミスが少なかったという点で日本軍の勝利。激しい対空砲火をかいくぐって、見事サラトガを撃沈。
一方、ハワイにて準備を整えていたアメリカ太平洋艦隊は満を持して戦艦10隻(最新鋭のノースカロライナ級2隻含む)と空母4隻の大艦隊を押し立てて出撃します。
それを迎え撃つ日本軍はかねてからの漸減作戦に則り、潜水艦や基地航空隊への攻撃命令、そして一段落した南遣艦隊からも主力を呼び寄せて連合艦隊主力が本土より出撃します。
竣工なったばかりの戦艦「大和」は慣熟訓練が終わらない為に、今回は見送りするしかなかったのでしたが。


今までいろんなテーマでの太平洋戦争を描いてきた著者ですが、日米が正面からぶつかる形となったのは珍しいかもしれないですね。
まぁ両国を巡る情勢はまったく違いますけど。
その大きな変更点としてはシベリアに存在するロシア帝国が同盟国であるのと、独伊ロの三カ国が対米宣戦布告を行っていないので、アメリカとしても堂々と欧州戦線に介入できないこと。
しかし軽空母含む護衛を伴った輸送船団を英・ソ向けに堂々と送っていて、間接的には介入していると言っても過言ではないわけで。
しかしルーズヴェルト大統領の公約で自国から戦争をできない以上、あらゆる手で相手を挑発して戦争をふっかけさせようとするところが厭らしいですよね。*1


今回のメインはマーシャル諸島攻略を目指す米軍太平洋艦隊とGFの主力たる第一航空艦隊との大規模航空戦。
その結果についてはある程度予想できるとはいえ、手に汗を握る展開です。
一般的にF4Fに対して零戦が圧倒的有利と思われますが、迎撃に徹すると意外とF4Fが健闘しているように感じるのが著者ならではでしょうか。
それと初戦からして熾烈な米軍の対空砲火。九九艦爆や九七艦攻の損害が多く、早くも後継機の存在が示唆されていますね。
空母部隊と協同するはずのマーシャルの基地航空隊はいきなり巡洋艦による砲撃で壊滅するというアクシデントがありましたが、藤首席参謀の具申によって移動した航空機はどうなったのか?


そして航空戦で敗北しても撤退せず、優勢な戦艦部隊を保持して基地化を進める米軍。
次巻での大規模艦隊戦の期待が膨らみます。
「大和」の参戦はなく、戦力的にやや不利な日本軍は航空機によってカバーするってところでしょうかね。

*1:それにひっかかったのが日本なんだけど