11期・21冊目 『身代わり』

身代わり (幻冬舎文庫)

身代わり (幻冬舎文庫)

内容紹介

ポルノまがいの小説『身代わり』を書いてトラブルを抱える成績優秀の美人女子高生が自宅で殺された。しかも現場には、一人の警察官の遺体が。一方、5日前の深夜、大学生が公園で女性を包丁で脅し暴行をしかけたが反撃され自分の腹部を刺して死亡。無関係に見えた二つの事件が高瀬千帆と匠千暁の名推理で交錯するとき、複雑な悪意の糸が解け出す。

深夜の公園で女性に暴行を働こうとしていた大学生が反撃された際に持っていた包丁で誤って腹部を刺してしまって死亡してしまう事件が発生するも、襲われていた女性の行方は不明。
一方で、日曜の住宅地で一人留守番をしていた女子高生、それに若い警察官が同じ手口で殺されていた。
不可解なことに検視の結果、女子高生と警察官は殺された時間に四時間の隔たりがあることが判明。
犯人は遺体と共に四時間も現場に留まり、警察官が来るのを待っていたというのか?


謎ばかりで犯人の意図が読めない中で、被害者の生前の行動を調べていたところ、自分自身と親しい図書館司書をモデルにしたポルノまがいの恋愛小説を書いていたこと、そして小説の通りに女子高生は妊娠していたことがわかります。
その一方で死んだ大学生と前日まで居酒屋で飲んでいた祐輔は、彼がわざわざ深夜に四十分もかけて現場まで歩いていったことから、元々約束があったのではないか?もしかしたら女性とは知り合いだったのではないかと推測し、生前の彼のことを調べ始めます。
そこでわかったのは、偶々入ったもんじゃ焼き屋の年上の女性店員と交際したが、自分の感情を押し付けるようになって嫌われて別れるも、諦めきれずにそのままストーカーと化していたことでした。


調べれば調べるほど謎が深まっていく二つの殺人事件。
唯一関わりがありそうな人物は海外にいたりして鉄壁のアリバイがあり、様々な仮説が立てられるも、決定打とは成りえない。
読むほどに迷宮の中を彷徨っているような感覚に陥ります。
そこで中盤まで名前でしか登場しなかったタックとタカチの二人が関わることによって、ある大胆な仮説が立てられるのです。


通常、殺人事件の捜査では背後の人間関係が重要になるわけで、そこがいつまで経っても明かされないのがもどかしい気がしました。
で、途中で死んだ大学生は身代わりになったのではないかという説が出てきて、ようやく取っ掛かりができたような思いがしました。
また、殺人に関するある手段について、今時風にネットやメールが活用されたかと思いきや、意外に単純な方法だったのが驚きでしたね。
あくまでも状況証拠による仮説が立てられて終わったために、すっきりしない幕切れではあります。
そこは賛否があるでしょうが、この著者の作風的には有りだと思いますね。


あと、大学生側に過去に何かあったらしいのはわかるのですが、背景の人間関係がぼかされているというか、正直わかりにくかったです。
実はシリーズものというか、前作があったのですね。
そちらをまだ読んでなかったので、ちょっと戸惑ったのは確かです。