- 作者: クレイトン・ロースン,フレドリック・ブラウン,ジョン・D・マクドナルド,ジョルジュ・シムノン,他,早川書房編集部
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: 新書
- 購入: 5人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (41件) を見る
内容(「BOOK」データベースより)
伝説の名アンソロジーが、ここに復活!そんなはずはない。汚職判事を尾行中の刑事たちは、片時も目を離さなかったのだ。だが、何の変哲もない電話ボックスに入った判事は、そこから煙のように消え失せてしまった!駆けつけた刑事たちの前には、ぶら下がったままの受話器だけが…世界ミステリ全集の最終巻として刊行された『37の短篇』は、古典風のパズラー作品から、ハードボイルド、クライムストーリーにいたるまで、傑作中の傑作を結集した画期的アンソロジーだった。三十五年の時を経て、その精髄がここに復活。密室不可能犯罪の極致ともいわれる、上記クレイトン・ロースンの「天外消失」をはじめ、ブレット・ハリデイの名作「死刑前夜」、メグレ警部登場のジョルジュ・シムノン「殺し屋」、スパイ小説の巨匠アンブラーの本格ミステリ「エメラルド色の空」など多士済々の十四篇を収録。
個人的にはアニメで「アーアアー」と叫びながら木から木へと飛び渡る姿が記憶に残っているターザン。その原作小説の一篇らしいです。
彼の所属する群れの雌が別の群れの類人猿に拉致されてしまい、匂いを元に奪回しにいくという内容。
そこそこ楽しめたけど、タイトルの「探偵」という点で期待していたのとは違っていました。
- 「死刑前夜」ブレット・ハリディ
国境付近の線路の敷設工事のために土木測量の仕事を請け負っている主人公。
ある日、新たに技術者の男を雇うことになり、仕事を通して友情を育みます。
しかし殺人事件の容疑者を追って保安官が彼らの工事現場にやってきて・・・。
語り手が実は・・・というよくありそうな叙述トリックなのですが、最後まで見事に騙されてしまいました。
- 「殺し屋」ジョルジュ・シムノン
有名なメグレ警部ものだそうです。私は初めて読みましたが。
各地を荒らしまわるポーランド人強盗団の一味らしきグループを監視していたメグレ警部ですが、そこにポーランド人の名誉を守る為に逮捕に協力したいという変わり者の青年が訪ねてきます。
最初は相手にしなかった警部ですが、最終的にある依頼をするのです。
首領の名前しか知らなかったゆえの意外な結末ですね。あるいは先入観が邪魔したというべきか。
- 「エメラルド色の空」エリック・アンブラー
毒殺された富豪の体内から砒素が検出され、容疑者として息子が逮捕されます。
担当していた刑事としてはそれで一件落着かと思いきや、チサール博士というチェコの亡命者が訪れて異を唱えたのです。
たぶん専門家じゃなければ知らなかったネタゆえに「ほほぅ」と感心せざるを得ないのですが、それよりも飄々としたチサール博士と苦虫を潰したような警察とのやりとりが目に浮かんできて笑えますな。
- 「後ろを見るな」フレドリック・ブラウン
しがない印刷工が自分の技術を買ってくれた友人のために復讐する話。
ホラーテイストが入った一人語りに惹きこまれます。
読み終えた後、うしろを振り返るのが怖くなったりして(笑)
- 「天外消失」クレイトン・ロースン
刑事が目を離さず監視していた電話ボックスから人が消えた!?
その謎を解く奇術師マリーニー。
わかってみれば単純なトリックなのですが、いざ現場に居合わせた人にとってはマジックでも使われたとしか思えない。こういう手法の謎解きはいいですね。本書を読むきっかけとなった作品だけに読んでみた甲斐がありました。
- 「この手で人を殺してから」アーサー・ウィリアムズ
自分を手ひどく振った女が結婚に失敗して戻ってきた。それも事業に成功した自分を頼る気満々で。自分の生活を守るためにあっさり女を殺した主人公ですが、当然警察に目を付けられて・・・。
完全犯罪を成し遂げることができたかという話。
フィクションとして読む分にはいいんですが、実際は技術的な点はもちろんのこと、冷徹な意思を持ちえないとできないのだろうなぁと思いました。
白昼堂々起こった銀行強盗を捜査する警察ですが、目撃証言が多い割には言っていることがバラバラで、犯人一味の足取りは一向につかめない。
そんな中で有効な手がかりとされたのが残されたビュイック。メカいじりの得意なある少年の意見によって事件は解決したのです。
言われてみればなるほどという点ですが、捜査のプロより第三者の方が意外と良いアイデアを思いつくのかもしれませんね。
- 「ラブデイ氏の短い休暇」イーヴリン・ウォー
精神病院で自身も患者ながら他の患者の世話をすることで施設にとってなくてはならない存在になっていた老人。
長年の献身に応えて一日かぎりの外出を認められたのですが、やりたいことができたと数時間で戻ってきてしまいます。では老人がしたかったこととは?
なんともブラックな結末です。犯罪者の更生とは何なのかと考えさせられますね。
- 「探偵作家は天国へ行ける」C・B・ギルフォード
天国に行く人には幸せと感じてもらわなければならない。
自分を殺した犯人を探すため、被害者の探偵作家に一日戻ってもらって、犯人捜しを依頼する天使。しかしいざ話を聞いてみると、周りは容疑者だらけだったという・・・。
コミカルで二転三転する上、オチもついていて良かったです。
- 「女か虎か」フランク・R・ストックトン
ミステリというより問題作。
とある王国で行われた究極の刑。闘技場にて二つの扉が用意されていて、片方は人食い虎、もう片方は美女が入っているという。選択一つで天国か地獄に分かれるのです。
そこで王女の恋人だった男が浮気したかどで刑に処せられるのですが、そこで答えのわかっている王女は一つの扉を指し示すところで終わるのですね。
王女の心の中で元恋人を助けるか否かの葛藤。
そして元恋人が王女を信用するか否かというところが問題提起であり、読み手によってどちらとも取れる結末になるでしょうね。
- 「白いカーペットの上のごほうび」アル・ジェイムズ
美女のナンパに成功した男がホイホイ家に付いて行ったら、死体の片づけを依頼されてしまった。仕方なしに手伝って、戻ると「アンタ誰?」扱い。
まぁここまでなら、そんなにうまい話はないだろうで落ち着くのですが、立腹した男は死体を女性宅に戻してしまうというオチ。なんだかなぁ。
- 「火星のダイヤモンド」ポール・アンダースン
火星産の大きなダイヤモンドが積み込まれた無人の星間飛行船が到着してみると消えていた。困った地球の警察は火星人の探偵に解明を依頼するのでした。
そのトリック解明もさることながら、火星・金星・地球と生態の異なる三つの惑星住民が暮らす世界観とか、英国の名探偵の精神を受け継ぐ火星人探偵とかいろいろ楽しめる作品でした。
- 「最後で最高の密室」スティーブン・バー
厳重に施錠された屋敷で主人が殺された。生前から諍いの絶えない息子が容疑者として考えられたが、息子だけでなく屋敷には誰かが出た気配がなく、自殺の可能性もない。
完全密室犯罪の一つの解ですね。もっとも現代の科学捜査ならばわりと簡単に判明しそうな気がします。