10期・55冊目 『絶海戦線3 真珠湾の雷鳴』

絶海戦線3 真珠湾の雷鳴 (朝日ノベルズ)

絶海戦線3 真珠湾の雷鳴 (朝日ノベルズ)

内容(「BOOK」データベースより)
2度にわたる大海戦を経て、米機動部隊を撃滅した日本海軍。戦局に王手をかけるべく、山本長官直率の連合艦隊主力は決戦の地へと繰り出した。一方、米国も超大国の総力をもって、海空を埋め尽くす戦力を備えて待ち受ける。艦隊防空の守護神たる重巡「摩耶」は、旗艦「武蔵」とともに敵のただ中に飛び込むが―。ミッドウェーの奇跡から始まる戦記シリーズ、ここに完結。

前巻にて第二次ミッドウェー海戦に勝利して米軍の稼働空母を皆無にすることに成功するも、ミッドウェー島の守備隊は相変わらずハワイからの爆撃による被害、潜水艦による輸送船狩りによって補給が途絶し、日増しに衰退していくのでした。
一方、短期決戦での戦争終結を目指す山本五十六長官はその決め手とすべく、自ら連合艦隊主力を率いての真珠湾ならびにオアフ島軍事施設の完全制圧*1を行うことを決意しました。
一方、通信傍受などによってその意図を掴んだアメリカ軍も総力をあげて防御を固めます。
かくして真珠湾を巡る日米の決戦が幕を開けたのでした。


もしも日本海軍がミッドウェー攻略に全力を挙げていたら?のIFで始まったシリーズの最終巻。
ミッドウェーの次は真珠湾というのは山本五十六長官の構想としては必然であったと思われます。
いわゆる仮想要素は極力排除し*2、史実の戦力のまま真珠湾攻撃に至ったら、というのが本作の特徴となっています。
奇襲となった史実の真珠湾攻撃と違い、本作の真珠湾攻撃は米軍の空母こそ無いけれど、多数の航空機に守られた要塞と化しており、大小合わせて11隻の空母を擁する日本軍の機動部隊との戦いはまさに航空撃滅戦といえるほどの激しさを見せます。
そして第一目標の大規模基地撃破が進み、ハイライトは湾口を守る新鋭戦艦を始めとする米艦隊との迫力ある砲雷戦。
先の「大和」を再現するような鬼神の如き「武蔵」の活躍です。
その挙句に真珠湾の施設を徹底的に破壊するための湾内突入(事実上の特攻)。
主人公の水兵が乗る重巡麻耶は武蔵の援護として最後まで付添い、そして斃れてゆく様が実に見事に描かれていましたね。


全3巻構成だっただけに終戦に至る道は多少強引であった気がしないでもないですけど、歴史の流れを変えることによるもう一つの太平洋戦争の展開としては著者らしく重厚な内容として仕上がっていたと思います。
まぁあれだけの損害度外視の作戦は現実的ではなさそうと思いながらも、これぐらい徹底的に(真珠湾を)叩き潰さないとアメリカの厭戦気分を生じさせることができないという山本長官の意図もわかるような気がしますね。

*1:補給が続かないために占領はしない

*2:欧州戦線は史実よりもドイツ有利らしい