10期・48冊目 『月光ゲーム―Yの悲劇’88』

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々―江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく…。いったい犯人は誰なのか。そして、現場に遺されたyの意味するものは何。

矢吹山のキャンプ場にやってきた大学生のグループ(3つの大学・4グループ)が意気投合。素晴らしい夏のひとときを過ごせると思っていた矢先に突如として休火山であった矢吹山が爆発。
飛んできた火山礫にて怪我人は出たものの、死者・重傷者は無く、テントや持ち物は無事でした。ただ一人の女性が噴火の前に置手紙を残してさっさと下山したらしきことが気がかりでしたが。
問題は唯一の登山道が土砂崩れによって閉ざされ、陸の孤島と化してしまったこと。
更にメンバーの一人が他殺死体として発見されたことが混乱に拍車をかけるのです。そして第二、第三の殺人が発生。
予想外の出来事の連続に皆生きた心地がせず、かといって脱出や救援の望みも無く、なすすべのないまま時間は過ぎていくのでした。


噴火という自然災害に噴火で道が閉ざされたことによってクローズドサークルとなったキャンプ場にて起こった殺人事件に翻弄される学生たち。
サバイバルと同時に殺人者の恐怖。最初は和気藹々とした雰囲気だったのが次第に殺伐となってゆく。果たして殺人に至ったのはどのような動機が隠されていたのか。
著者は名は知っていても初めて読む作品でしたが、その特殊な舞台設定が興味を抱いた一因でもあります。
えーと、それにしても登場人物が多いです。
主人公・有栖川有栖の所属する英都大学推理小説研究会の面々(江神部長に持月と織田)、それに有栖が想いを寄せる理代はじめ後半何かと行動を共にすることが増える短大生のグループあたりはともかく、被害者が出る雄林大学のグループ10名*1の氏名・特徴が把握しきれないまま殺人事件が発生してしまうのですね。
あと場面によって氏名だったりあだ名だったり統一されていないこともあって一致しづらく、「こんな人いたっけ?」となったので、雄林大メンバーはせめて半分以下の人数にした方がわかりやすかったかもしれない。


特別謎解きが得意でミステリ好きというわけじゃないですが、ストーリー自体は楽しめました。
旅先での一期一会というのは何とも言えない独特の雰囲気があります。自身の学生時代を思い出させました。
あえて言えば、殺人の動機が弱かったかなぁと。よくいう「カッっとなってやった」の背景には日頃の人間関係があったりするもんですが、この作品内では出会ってわずか1日程度なので殺人に至るにはよほどのことが無いと不自然ではないかと思うのです。

*1:一応、「画伯」・「弁護士」といったわかりやすい特徴がある人物はいるのだが