10期・44冊目 『戦国スナイパー 3 信玄暗殺指令篇』

内容(「BOOK」データベースより)
戦国時代にタイムスリップした陸上自衛隊員・笠間慶一郎。戦国武将・織田信長の命を救ったことで、ボディガード兼鉄砲頭として取り立てられた。しかしその間にも信長包囲網は着々と完成に近づき、最強の敵・武田信玄が動き始めた。信長は女忍者・さくらに信玄暗殺を命じる。一方、慶一郎は信玄の父・信虎に無理やり武田側に寝返るよう迫られるのだが…。大好評「戦スナ」シリーズ、第3弾。

前巻から1年以上空いてしまい、ちょっと内容忘れていました。
というか、タイムスリップものをいろいろ読んでいて、主人公の職業は違うけど時代設定や登場人物が近い『信長のシェフ』とイメージがかぶってしまいますな。


それはさておき、織田信長の覇業としては避けては通れない最大の敵。武田信玄との対決ですよ。
序盤で歴史に詳しくない笠間慶一郎にとっては織田と武田の戦いの経緯が思い出せず、せいぜい長篠の戦いがあったなぁ程度。
そこで俗説による鉄砲3000丁の三段撃ちが実際の戦場においては非現実的だとし、慶一郎主導による300人程度の猟兵隊が組織されつつあるのが面白い。それがこの世界の長篠の戦に繋がるのかな。
まぁ現時点では三方が原の戦いにて織田・徳川連合軍の大敗があって、遠江から三河へと西上した武田軍が野田城を囲んだところ。
実は小城であるはずが一か月以上の長期に渡った野田城の戦いにはいろいろ説があって、信玄の病状が悪化したためだとか、包囲中に城内から狙撃された伝説があるとか。
結果的には病に倒れた信玄の最後の戦いとなるのですが、当時は勝利が続いた武田優勢の見方が強い状況。
窮地に至った信長はさくらに信玄暗殺指令が下され、そして慶一郎のもとには食えない僧侶・道有*1より寝返りの誘い(実態は沙奈を人質にした脅迫に近い)が来たのでした。


忍びによる影戦では武田方が上手であり、仲間を失い一人重傷を負ったさくらですが引き換えに影武者ではなく信玄本人を見破り、勧誘を断って帰還中の慶一郎に合流というか救われる。
そして新たな秘策をもって再び信玄暗殺に向かうわけです。
そこに足利義昭により暗殺阻止の任務を受けた杉谷善住坊や信玄配下の歩き巫女(くのいち集団)を率いる朧月など慶一郎にとって1巻での因縁深い連中が絡んでくるという展開。
なかなか派手なアクションの連続で読み応えありました。
実は密かに慶一郎の後を付けた松千代・イサナのコンビが引っ掻き回している気がしないでもないですが。
雨さんの活躍が半端ねえっす。分身の術使いは実は双子だったというのはありがちですが、最終的に4人・6人と分裂していったのはどういうわけだろう?
一方、戦いを通じて慶一郎とさくらの互いの心情に変化が訪れてきたと思いきや、その野望を挫かれた道有によって今度は沙奈に危機が迫るってところで次巻につなげるところはなかなか巧いものだと思いました。

*1:正体は信玄の父である武田信虎