10期・17冊目 『スウォーム』

スウォーム (1978年) (Hayakawa novels)

スウォーム (1978年) (Hayakawa novels)

効率的な蜜集めのためにブラジルに輸入されたアフリカミツバチが管理の失敗などが重なり、その強い毒性や凶暴性がさらに進化してアメリカに上陸。
元からいたミツバチを駆逐して数を増やし、不幸にも巣に近寄った人を襲って死亡事件にまで発展します。
生物や環境全般に詳しい科学者ジョン・ウッドは各地から集められた情報により、アフリカミツバチの侵略に脅威を感じ、専門家を集めて対策チームを立ち上げますが、この殺人蜂の能力は彼らの想定の遥か上をいっていたのです。
春から夏にかけて暖かくになるにつれ、蜂の群れは人間の済む領域にまで進出して被害が続出。
ウッドのチームはこれまで計画していたさまざまな対抗手段(蜂工場で育てていた不妊の雄蜂など)を実行するのですが、ほとんど効果は無く、逆にアフリカミツバチは勢いを増して田舎から都市部に押し寄せるようになり、人々の暮らしは立ち行かなくなってゆくのです。
果たしてアメリカはこのまま殺人蜂に屈することになるのか?


虫が凶暴化&大群となって人々を襲う。
生物系パニック小説の王道ですね。
しかしながらミツバチは蜂の中でも比較的ポピュラーではあっても脅威としては小さい気がしました。やっぱり怖いのはスズメバチでしょう。
そのままズバリ『雀蜂』(貴志祐介)という小説がありました。*1
それがここで登場するアフリカミツバチは別名キラービーと呼ばれるほどミツバチの中では攻撃性が強く、実際に少数ながら死人も出ているとか。
wikipedia:アフリカナイズドミツバチ
何気に小説と同じように南米から北上してアメリカにも侵入している事実もあって驚きました。小説と違ってセイヨウミツバチとの交配によって弱められているそうですが。


以前読んだ『ヒート 地球が熱くなる日』と同様にこの著者は前〜中盤に科学的な説明が長く入るのが特徴です。*2その環境破壊による異常現象発生のメカニズムなど当時としては斬新だったのかもしれませんが、21世紀の今読むとやや古めかしい印象を受けます。
まぁそれだけに文系の私でも理解しやすかったですけどね。
ミツバチは蜂蜜作りという点で人間に身近な昆虫である上に植物の触媒なども関係して、単純に排除すれば良いというわけではなく、そこが問題を複雑にしているようです。
対蜂強硬派とは別に擁護派が作品に登場するのも頷ける話。しかしそのパフォーマンスで蜂を放すもアフリカミツバチが混ざっていたようで、本人が真っ先に刺されて死んで逆にパニックが広がってしまうあたりが如何にも他のパニック映画にありがちなシーンでした。
やっぱり虫というのは小さくても群れを成して襲ってくるのが恐ろしいというのがよくわかる作品でしたね。

*1:あくまでも戦うのは個人で内容的には微妙だけど

*2:主人公が女性科学者と懇ろになってチームの一員に引き入れるのもなぜか同じ