9期・76冊目 『カリオストロ伯爵の秘密―俺のバイクは、タイムマシン』

内容(「BOOK」データベースより)
「私、アレッサンドロ・カリオストロ、言イマス」三陸海岸のひなびた船着場にバイクを止めた葛城正比古は、フランス語誂りな日本語を話す外人に、声をかけられた。愛車XLV750Rでの、行きあたりばったりの東北ツーリングの途中の出来事である。その外人は、「追われている。あなたのバイクに乗せて欲しい」と懇願した。不審を抱きながらも、タンデムシートに提供した葛城だったが、後ろを走っていた女性ライダー・平群まゆみと共に、不思議な白い霧に包まれてしまう―長篇タイムトラベル・アドベンチャー

東北をツーリング中のライター・葛城正比古と、葛城にバイクを応急修理してもらったことで縁ができた平群まゆみの二人がカリオストロ伯爵と名乗る外国人に関わったために時空を超えたトラブルに巻き込まれていくという連作集になっています。
行きがかり上、カリオストロ伯爵をバイクの乗せて不審な外国人グループに追われる内に見知らぬ森の中に迷い込んでしまいます。
職業柄、カリオストロ伯爵という人物が18世紀に存在していたことを知っていた葛城は当の外国人を問い詰めるのですが、あくまでも本人だと言い張り、しかも時空転移装置によってフランス革命真っ最中のパリ郊外にいるというのです。
カリオストロ伯爵はいわば時空管理グループ(タイムパトロールみたいな組織?)・グノーシスにスカウトされていて、上司であるサンジェルマン伯爵の元で働いていたのですが、どうやら一時的に大金と名声を手に入れて有頂天のあまりヘマをしてクビを宣告されてしまった模様。
表題作は導入部と言っていい内容で、あまりタイトルとしてふさわしくないですね。
むしろ敵組織のバイク型タイムマシンを入手した葛城正比古と平群まゆみの二人が今度はサンジェルマン伯爵の指令を受けていろんな時代へと跳び回ることになります。


といっても主な話は赤壁の戦いでの方術師・左慈と組んでの曹操暗殺指令、現代日本に連れて来られてしまった無名時代のノーマ・ジーンに出会う「マリリン・モンローの秘密」の二つですが。
三国志演義の影響強い日本では悪者に描かれているからといって歴史上の人物を悪い奴だからといってぶっ殺せという乱暴な指令が出るあたりでまっとうな組織じゃなさそうな印象を受けます。
マリリン・モンローの秘密」は知られざる意外な素顔を描いていて面白かったです。
そして本作の目玉としては、コンピュータという言葉が差別語に当たるくらい超進化した大脳を持ち、その可変性により知識として吸収した様々な物体に成りきることが可能なタイムマシン・クロノトランシリエントでしょう。
上位機種からの影響を受けることを除けば単なる機械を超えて、タイムトラベルのパートナーとして抜群の機能を誇ります。
あとその上位機種としてサンジェルマン伯爵の搭乗機であるクロノマキナ(ロボット型タイムマシン)も登場して敵とのバトルを繰り広げるのですが、戦い方が原始的なのであまりすごさは感じなかったですね。
色々とアクション要素を入れ込んだ割には主人公らは大して活躍しないし、あまり盛り上がる間もなく終わったという印象でした。