9期・66冊目 『絶海戦線1 滾るミッドウェー 』

絶海戦線1 滾るミッドウェー (朝日ノベルズ)

絶海戦線1 滾るミッドウェー (朝日ノベルズ)

内容(「BOOK」データベースより)
昭和17年6月、帝国海軍の主力艦隊は柱島泊地を発し、東方へと進撃していた。目標は米国の要衝ミッドウェーと、米太平洋艦隊の撃破。開戦以来最大の強敵に、海軍は空母10隻という前代未聞の戦力を集中させた。ハワイと米本土を望む要地に、百戦錬磨の艦上機が怒濤のごとく挑みかかる。中部太平洋を舞台に、日米乾坤の戦いがいま始まった。戦記シミュレーション巨編始動!

開戦劈頭の真珠湾奇襲ならびに南方資源地帯への占領を成功裏に収めた後、日本海軍の第2段階作戦としては米豪分断のためのFS作戦(フィジーサモア方面の攻略)が有力でした。
しかし艦隊主力(戦艦)を一挙に失った米軍がガトー級潜水艦の大量建造に踏み切って、大々的な通商破壊を実施する目論見が判明し、このまま手をこまねいていれば将来的に日本の船舶運用が窮地に陥ること、そして陸軍機を空母に載せるという奇手で本土空襲を許してしまったことが引き金となり、ハワイ攻略を最終目標としてまずは要衝ミッドウェー攻略と敵空母の撃破を目的とした作戦が立てられます。
戦力集中の原則通りに空母は10隻(うち軽空母2隻)全てをミッドウェー方面に投入(牽制作戦として立案されたアリューシャン攻略は行わない)。
敵空母撃破を目的とする制圧部隊、ミッドウェー攻略を目的とする攻略部隊とに分け、必勝の体制で進めます。
ただ、参加将兵の中には真珠湾の時と比べるとあまりにも情報統制が疎かになっていることから、敵は我が意図を見抜き、万全の態勢で待ち構えているのではないかと危惧する者もいました。


横山信義氏の新シリーズです!
あらすじ読んで、例によって太平洋戦争ものだということはわかっていたのですが、朝日ノベルズではかつて『宇宙戦争』を出していたこともあったので、SF要素有りなシリーズかと思いきや、史実に沿った正統な架空戦記シリーズでした。
太平洋戦争のターニングポイントであったミッドウェー海戦
もしも日本軍が勝利していたら?というのは戦史に興味持ち始めた頃に抱きがちな考えです。まぁ占領はできても補給が続かないだろうとは普通にわかりますがね。
そのあたりで大胆な設定変更をするとは考えにくいので、さほど大きく予想を裏切らない展開なのだろうとは思います。
むしろ著者の強みは迫真に迫る海戦描写であることですね。
特に今回は高角砲に所属された初陣三等水兵や潜水艦出身の巡洋艦艦長といったいわば航空戦の脇役にスポットを当てた描写が新鮮でした。
あと珍しく日本側のみの視点だったので、アメリカ軍がどう出るか読みにくかったです。
もしかしたらですけど、終戦まで長く引っ張るのではなく、戦争中盤にスポットを当てた2,3巻程度の中規模シリーズになるかもしれないですね。