- 作者: 横山信義,高荷義之
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/08/22
- メディア: 新書
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内容(「BOOK」データベースより)
欧州にて劣勢が続く独軍は、科学技術力を結集し、新型兵器V2、さらに衝撃の最終兵器の開発に成功した。一方太平洋では、トラックから撤退し進退窮まる日本軍が、情報参謀・磯崎稔の提案によりパラオに全戦力を集結。「大和」「武蔵」に加え近代化改装を終えた「劔」「燕」含む劔型四隻で一撃講和に最後の望みをつなぐ。対する米軍は、ニューハンプシャー級を始めとする新鋭戦艦九隻と新型探知機「ウェザーマン」を投入し兵力で圧倒せんとする!著者作家生活20周年記念の戦記巨篇、ここに完結。
前巻でトラックが航空攻撃を受けて事実上無効化されてしまい、ラバウルも孤立状態。
戦力が回復した次の戦いで米軍が目指すであろうサイパンもしくはパラオを失陥することはおのずと敗北への道を意味します。
サイパンは本土空襲*1の拠点となりうるに対して、パラオはフィリピン攻略の拠点となり、南方資源帯への航路が断ち切られてしまう。
どちらで迎え撃つかGF内で激論が戦わされた結果、奇しくも米軍の進撃ルートであるパラオと一致。
かくしてその地で決戦となったのですが、講和への望みを繋ぐために日本軍は「大和」「武蔵」に近代化改装を終えた劔型を加えて6隻の46cm砲艦で勝利を目指す。
一方米軍は最新鋭のニューハンプシャー級*2を始めとする戦艦九隻を押し立て、それに前回試験運用を行った新型高高度探知機「ウェザーマン」(機体はB24)を切り札に勝利を確信していました。
大雑把な流れと感想を書きますと、
- 前哨となる基地攻防戦では新型艦戦・烈風を投入したことで日本軍善戦。
⇒でも守る側なのに基地航空隊と艦隊で連携できなかったのが日本軍の手落ち。そこは米軍の方が上手というか、あくまでも艦隊の補助戦力という思想から抜け切れない日本側ということか。
- 主力艦同士の戦いではいきなり遠距離で精度の高い砲撃を受けて日本艦隊が苦境に陥る。
⇒角田長官がB24をちらりと見るシーンはあったが「ウェザーマン」の正体に誰も気づかなかったのが意外。
架空戦記では冷遇されがちな栗田提督が今度こそ活躍するかと思ったら初っ端で退場。やっぱりそういう役どころか・・・。
- 距離が詰まって日本艦隊反撃、双方に被害が続出するも結果的に日本が押し切って米軍退却
⇒乱戦の中では外れ魚雷が別の艦に当たるのはあり得るのだろうけど、計ったように主力戦艦2隻に一発ずつ当たって戦闘力を奪うって都合良すぎ。
今回ばかりは米軍の勝利は固いだろうという展開を覆すために強引さが出たか。
でもって帳尻合わせのように最後に米駆逐艦の雷撃を受けて沈んだのはなんだかなぁと思った。日本艦隊の巡洋艦・駆逐艦は何していたんかと。
- 欧州では”迎撃できない”V2ロケットの運用開始。その影響か、連合軍の史上最大の作戦と東部国境からのソ連侵攻が始まる。しかし進撃しようとしたまさにその頭上でドイツの新兵器の光がさく裂!かくして欧州戦線は新展開へ。
⇒前巻でのドイツ爆撃隊の伏線回収ですな。そして欧州戦線激変→その影響で日米講和はこの頃すっかりお約束。
概ね予想がついた展開だったわけですが、日本の不利状況から講和にもっていくため、そして1巻に絞ったことで強引さと不自然な記述が目立ちましたね。
それでも最後まで安定して読ませるのが著者の実力ではありますが。
横山信義氏の作家生活20周年記念ということで出世作『八八艦隊物語』をベースにした新シリーズでしたが、後半の展開はまったく別物になりました。
でもこれだけ同時代の架空戦記シリーズもの書いていれば、どうしてもどこかで見たような展開ってなってきますよね。
もしかしたら、太平洋戦争をテーマにした架空戦記シリーズを打ち止めにするために、八八艦隊を選んだのかなって気がしました。
もともと単発ものなら架空戦記以外も書いている人ですから、これからは違う分野の長編を書いても良さそうな気がします。