9期・44冊目 『コパーヘッド』

コパーヘッド (創元推理文庫 (223‐1))

コパーヘッド (創元推理文庫 (223‐1))

冷戦の最中、アメリカで核兵器による放射線を無効化する画期的な新兵器BLAVOが試験段階に入ったことを察知したソ連
もし実用化されてしまえば、軍事バランスは一気にアメリカに傾くことが予想される。
ある日、ノルウェーのレーダー基地が何者かによって爆破される事件が起こり、その隙をついて、工作員と最新鋭の空対空ミサイル・コパーヘッドを搭載した英国航空機そっくりのジェット旅客機が離陸した。
それはBLAVOが秘匿されているボストンを市街地ごと葬り去ろうとする壮大な作戦の序章であった。
本物の英国航空機をコパーヘッドで撃墜し、すり替わったソ連の旅客機は順調にアメリカ本土への空路を進む。
一方、ソ連の意図を掴めず混乱するアメリカの首脳部であったが、撃墜された英国航空機の生存者が救助されたことから、米空軍のブランドン将軍は一連のソ連の動きに疑念を生じて極秘に調査を進めていた。


守る側のブランドン将軍、攻める側のソ連工作員・パヴロワを中心にして描かれる軍事サスペンスとなります。
米ソ双方ともに本格的な戦争は望まないけれど、国のメンツをかけて優位に立たなければならない。
そこで限定的な軍事作戦や外交上の駆け引きが描かれるわけですね。
悪逆非道なソ連の謀略に対抗するアメリカという構図。国を守るために果敢に立ち向かう将軍には足を引っ張る上司やらプライベートの悩み(末期癌の妻)やらを抱え込んで、すんなり事は進まない。
ありがちな設定ではありますが、さすがに山場に向かう展開はよくできていて最後までハラハラドキドキ楽しめました。
現代から思うと、冷戦時期ならではの非常手段のオンパレードなんですが、ソ連の旅客機を止めるための最後の手段のようなことはさすがに現実には無いよなぁと思ったものです。


主題とは別にブランドン将軍は結局妻の臨終には間に合わなかったわけです。
まぁ仕事よりも家族を優先させるアメリカ人男性ということで、国家の緊急問題に取り組んでいるために病床の妻のもとに付いていられない苦しみを書いているのかもしれません。
しかしその割にはかつて不倫関係にあった英国情報員の力を借りたり、エピローグではそのまま復縁しちゃったりするあたりはなんだかなぁという感じでした。