9期・40冊目 『八八艦隊海戦譜 死闘編2』

八八艦隊海戦譜 - 死闘篇2 (C・NOVELS)

八八艦隊海戦譜 - 死闘篇2 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
ソロモン諸島からの撤退は、日本軍に新鋭機F6Fによるラバウル、マーシャルへの大規模空襲をもたらした。さらに、米軍はミシガン級戦艦に加え、米軍最速の新鋭戦艦ミズーリ級を竣工、来るべき闘いのため真珠湾に続々と新鋭艦を結集させる。米軍の本格的な中部太平洋侵攻を前に、連合艦隊はマーシャルから撤収、トラックへの戦略的撤退を英断する!すでに八八艦隊の半数を欠く中、帝国海軍最強を誇る「大和」「武蔵」および「穂高」「乗鞍」の四六センチ砲搭載艦計四隻で一挙邀撃に打って出るが―!?

序盤からラバウルマーシャル諸島の基地がたびたび空襲を受けています。
アメリカ側の艦戦がF6Fに切り替わり、エセックス級空母*1が前線に出てきたことにより、苦戦を強いられる日本の航空隊。
一方、多方面の戦いのために空軍戦力が引き抜かれた結果、帝都ベルリンへの空襲を許してしまったドイツ。
既にアフリカ戦線では敗退してイタリア近辺での攻防に移り、あの史上最大の作戦の予兆が。
(ちなみに東部では戦端こそ開かれないものの、T34とティーガーがにらみ合う状況)
本気を出したアメリカ軍によって枢軸側がかなり押されている様子。それでも勢力的には辛うじて均衡を保っているが、一か所が崩れれば連鎖的に決壊してしまいそうな印象です。


中部太平洋でも米軍攻勢が予想される中、連合艦隊は劣勢となった母艦航空戦力を補うため、マーシャルから引いてトラック基地の防御を固めて米軍を迎え撃とうとします。
大和・武蔵の姉妹艦に修理の終えた剱級2隻の46cm砲戦艦を中心にした日本側に対して、ミシガン級戦艦と最新鋭ミズーリ級を揃えた戦艦群同士の戦いがメイン。
相変わらず安定の戦闘描写ですが、いろいろ感想箇条書き。

  • 46cm砲戦艦は苦しみながらも強さを発揮。一方で残存八八艦隊計画艦は昔日の栄光無し。
  • 八八艦隊最古参ながら今まで大きい被害を受けなかった長門。史実や元の『八八艦隊物語』と同様に最後まで生き残ると思ったのに・・・。
  • 金剛級3隻は完全に空気扱い。戦艦ではなく巡洋艦の戦いに参加させるべきでは。
  • 戦艦個別の戦闘描写に多く割かれた為に巡洋艦以下は省略されてしまったのは残念。

戦闘そのものは辛うじて日本側の勝利という形になりましたが、中破以上の艦艇の修理にかかる時間を考えるとアメリカの方に分があること。いち早く戦力回復した機動部隊によりトラック基地が空襲を受けて破壊されたことなどから戦略的にはアメリカがアドバンテージを取ったという結果です。


『八八艦隊物語』は史実の太平洋戦争をなぞったかのような展開で終戦まで書かれていました。
それに対して『海戦譜』では世界史的にもアレンジされており、ドイツ不利な状況で早々に対米講和への動きがあります。
そこは後世の視点としては賢明ではありますが、そうすんなりと行くのかなと。
まぁ次巻でわざわざ「終戦編」と銘打ってあるから史実とは違った講和が展開されるのでしょう。
ラストで動きのあった総統府直轄のドイツ爆撃部隊編成*2が何らかの鍵となるのかもしれないです。
それと日本でもF6Fに対抗するために新型エンジン遊星*3搭載の戦闘機が登場するかもですね。
その代わりにというか、トラック空襲のどさくさに紛れて瀑龍終了してしまったのが残念。
まぁその存在を知られた上に制空権を握るのが難しくなったわけで、活躍の場は見込めないのも確かですが。

*1:ほぼ月刊だった史実と違ってペースは落とされているが

*2:もしかして原爆か?

*3:元はドイツのFw109Aシリーズで使用されたBMW 801D-2エンジンらしい