9期・35冊目 『パンドラ2』

パンドラ2 (ハヤカワ文庫JA)

パンドラ2 (ハヤカワ文庫JA)

内容(「BOOK」データベースより)
NASAに勤務する朝倉の友人・辻井汐美は、射手座流星群の一部が衝突して被害を受けた国際宇宙ステーションを訪れた。汐美はそこで、凶暴化したラットが脱走し、乗員を殺して地球へ降下したことを知る。ラットが降下したオーストラリアの北東岸の珊瑚礁では環境異変が進行していた。異変は海を伝わって広がり地球規模へと拡大してゆく。人類が直面するいまだかつてない戦いをもたらしたものの正体とは。

前巻からの流れで宇宙ステーションからの落下物が原因と思われる海洋異変がオーストラリアの近海で拡大。
海は茶褐色に染められて、その中で生物は生存できない。
もはやそれは地球外生物による侵略という認識により、アメリカ海軍の空母艦載機からの爆撃が茶褐色の帯の先頭に対して為されていたのですが、めぼしい効果は無し。
それはまっすぐインドネシアへと向かっており、折しもボルネオ島の内陸部では動物たちが大群で人々の集落を襲い始めたことにより難民が発生していました。
しかもちょうどインドネシア・マレーシアの国境近辺ということで、両政府が軍隊を出動させたことにより国際緊張も高まっていました。
この問題の関係者として、朝倉知幸はオーストラリアからボルネオに派遣された自衛隊の先遣隊の元に連れていかれ。大規模な難民発生の裏に何があったのか実地に調査に入ることになるのです。


今回は朝倉が目にする状況および彼の推論によって、地球環境を地球外生物のために作り替えようとするパンドラ・フォーミングの実態が具体的に形どっていきます。
前段階としてボルネオの奥地から人を排除し、プロジェクトの中枢を置く聖域とするらしい。
野生動物を使役するどころか、現地民でさえラジオ放送を通じて支配しようとするその高度な組織作りには驚きを感じます。
また解説にもある通り、この物語では遥かな過去に起こった種の大量絶滅にも匹敵する地球規模の環境異変が進行していることが明らかになり、そのスケールの大きさに戦慄します。
しかし人類(米軍主導だが)は知と対話による解決ではなく、始めはたかが動物と侮り、思わぬ被害を受けると一転して強硬策を取るようになってしまうところに悲劇の予兆を感じざるをえません。
2巻の最期はパンドラに関する情報を発信した朝倉が現地の村落で孤立・包囲されてしまいます。果たして彼らの運命やいかに?
今回は朝倉視点が中心でそれはそれで目まぐるしい展開で面白かったのですけど、他の人物やもっとグローバルな視点でこの世界観がわかるといいですね。
そういう意味で物語後半である3,4巻に期待。