29冊目 『戦国スナイパー2 謀略・本能寺編』

内容(「BOOK」データベースより)
戦国時代にたった一人でタイムスリップした陸上自衛官・笠間慶一郎。彼は信長の命を助けたことでボディガード兼鉄砲編制隊長として雇われる。そして女忍者・さくらや雨に助けられながら刺客と戦い、鉄砲頭として信長の信頼を勝ち得ていく。しかし、信長の命を狙う巨大な陰謀がついに動き出す。主君最大の危機に慶一郎はどう動くのか?そして彼が現代に戻る日は来るのか?激動の第2弾登場。

冒頭で長島一向一揆との戦い(1570年〜)が描かれていますが、ちょうど第一次から第二次に渡る信長包囲網が形成される時期で、織田軍としては非常に厳しく多忙だった頃ですね。
戦国時代にタイムスリップしてから紆余曲折ありましたが、笠間慶一郎は鉄砲(特に狙撃)に関する信長の身辺警護兼部隊編成担当として雇われます。
鉄砲やその戦術に詳しい割には人を撃つことを躊躇う戦国人離れした性格のためか前線に出ることはあまりなく、時に相談役だったりもしますが人使い荒い信長のこと、なかなか忙しい日々を送っているようです。
その周囲もさくら*1佐々成政の嫡子・松千*2に加えて新しいキャラクター・甲賀くのいちの雨(さくらとは全く違うタイプの美少女)と父の仇をうつために鉄砲術を得ることを切望しているイサナ(男装しているが実は少女)が登場して何かと華やかになりました。しかしなぜ彼の元には少年少女ばかり寄ってくる?(笑)


会話は相変わらず現実風というかラノベ調ですが、今回は謀略編と銘打っているだけに何かときな臭い。
本能寺というと当然信長の最期の場所を思い浮かべるわけで、歴史に詳しくない慶一郎にとっても複雑な胸中。
もともと上洛した折に宿舎としていた法華宗の寺(実態はちょっとした城塞)の一つだったりするわけですが。
前巻で因縁のあった鼻瘤の悪尉という鉄砲撃ちに武田方の忍びたち*3が登場して信長を亡き者にしようとする企みの奥深さが明示されます。まぁ、やけに周到すぎる気がしないでもないですけど。
さらに信長包囲網に足利義昭が一枚噛んでいることが発覚して、将軍家から連絡役として織田家に派遣されているかたちのさくらの立場が危ぶまれたり。
信長を中心として複雑な動きがあり、そこに慶一郎は否が応でも引き込まれていく展開となっています。
もっとも今回は鉄砲専門部隊の編制教育に忙殺されていますね。せっかく育て上げた隊員も秀吉らの武将に引き抜かれてしまうし。
しかし信長の覇業の中心となる鉄砲隊編成に慶一郎が深く関わっており、今回は例として長篠の戦に言及されたように今後の戦に影響していくことが予想されます。
そう考えると、陸自隊員・笠間慶一郎のタイムスリップ自体が歴史の必然であったという結論になっていくのかなぁと思ったりもしました。

*1:作中で柳生宗厳の娘であることが明かされた

*2:長島での戦いで若くして戦死するとも実在しないとも。この中ではどういう扱いになるんだろう?

*3:前巻で登場した旅籠のおかみが黒幕か