9期・3冊目 『雷鳴の館』

雷鳴の館 (扶桑社ミステリー)

雷鳴の館 (扶桑社ミステリー)

内容(「BOOK」データベースより)
スーザンは見知らぬ病院のベッドで目覚めた。医者が言うには、彼女は休暇中に交通事故に遇い、このオレゴン州の田舎の病院に運びこまれ、三週間も意識を失っていたのだという―。しかし、彼女にはそんな記憶はなかった。と同時にこれまで自分がたずさわっていた仕事の内容、同僚の名前が思い出せない。なぜか彼女には、そこだけ記憶がないのだ。そして、彼女は病院の中で信じられないものを見た。大学時代にボーイフレンドを殺した男たちが、当時の若い姿のまま患者として入院しているのだ。その上死んだはずの男たちまでがスーザンの目の前に現れた。これは狂気か?幻覚か?その後もぞくぞくと怪異現象は起こる。そしてスーザンが最後に発見したのは信じられないような事実だった。人気沸騰の鬼才クーンツが放つ、異色の大型ロマンス&サスペンス・ホラー。

主人公のスーザン・ソートンは優秀な物理学者であり、両親を早くに亡くしたことも影響して感情を抑制した極めて科学的・合理的な考えを持つ女性であることを自負しています。
そんな彼女にもトラウマがあって、大学時代に参加したサークルの歓迎会(という名の元に行われたいじめ)で「雷鳴の館」と呼ばれる洞窟に誘い込まれ、四人の男に暴行を受けて彼氏を殺害された挙句に彼女自身も命からがら逃げだしたこと。
その後、裁判で証言台に立ったスーザンを見る犯人の表情は忘れることができない。


事故後、体力がある程度回復し、リハビリを開始したスーザンですが、病院内であの四人組が当時の年齢・姿のまま患者や職員として現れ、悪意をむき出しに(彼女にはそう見えた)してきたのです。
事件から13年の年月が経ち、しかも四人の内二人は死亡しているはずなので現実的に考えれば本人ではあり得ない。
あの四人にそっくりな人が偶然同じ病院に居合わせたということなのだろうか?
これは事故の影響による障害のせいかあるいは幻覚であり、現実ではないと思い込もうとするも、たびたび姿を現すかつての四人組、そして同室のベッドに現れた彼氏の死体。
精神的に追い詰められたスーザンですが、偶然からくりの一部を見つけ、何の目的かわからないがこれは病院ぐるみの狂言であると確信して脱出を決意するのですが・・・。


13年前の悪夢がその当時の姿で蘇ってくる。
それは単なる幻覚でなく、現実の手触りと痛みを伴ってくる。
精神的な強さを自負するスーザンもたびたび姿を現す過去のトラウマに何度も揺さぶられて追いつめられたり、体力・気力も万全でなくが男たちにいいように嬲られる悔しさなどヒロインの心理状況が手に取るように感じられますね。
遂に脱出を決意し、何とか病院を出て町に向かうもそこに待っていたのは更なる絶望だった。
果たしてこれは現実なのか、それとも怪奇のなせる業か?
ヒロインと共にその不可思議な現象に悩まされる。まさに読む者を惹きつけて離さない展開が待っています。
それだけにオチとしてはいささか安易というか都合良すぎる*1気がしましたが、まぁ80年代という時代背景を考えれば仕方ないでしょうか。
あと、タイトルからして洋館を舞台にしたホラーなのかと思いましたが、洞窟だったのは意外でした…。

*1:若干ネタバレになるが、敵国を過大評価するあまりにその陰謀が突飛すぎて現実離れしてる