8期・70冊目 『十角館の殺人』

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

十角館を訪れた大学ミステリ研の七人。
彼らの慣習として、海外の有名ミステリ作家から取ったニックネームで呼び合っており、物語上もそれに則って進められています。
一方、ミステリ研のメンバーや関係者に過去の死亡事件を糾弾する手紙が届き、元メンバーの江南と守須は独自に調査を始めます。
十角形に作られた奇妙な館を舞台に一人、また一人と殺されていく。
犯人は七人の中にいるのか、それとも外部からの侵入者なのか?
そして半年前に島で建築家・中村青司の家族が殺された事件と、一年前のミステリ研の飲み会で女子学生が急性アルコール中毒で急死した件が今回の事件に何らかの関連性があるのか?
最後までそのストーリーに引き込まれてしまうのですが、終盤に衝撃の一言が待っているのです。


綾辻行人のデビュー作にして、「日本のミステリー界に大きな影響を与え、新本格ブームを巻き起こしたとされる。この小説の登場を期に、本格ミステリ界では「綾辻以降」という言葉が使われるようになった。」(Wikipediaより)と言われるほど有名な本作です。
それだけの前評判を知って期待しすぎたのがまずかったのかもしれません。
実は犯人を知った時はさほどの衝撃度はありませんでした。
島に行ったメンバーの内、「彼」はさほど目立たない人物ですが、一人だけ前もって準備をしていたという点があのプロローグと結びついて、犯人像として目がつけやすかったので。
それでも半年前の事件が本当の意味では未解決であり、焼死体のすり替えによる中村青司犯人説が浮かび上がってきたり、しまいにはその弟・紅次郎までが怪しかったりと振り回されましたね。
更に島と本土では呼称を変えており、元メンバーのうち江南のニックネームが「ドイル」だというのも心憎い演出。だとすると守須の方は…とミスリードを招きやすいわけで。
犯人の行動について、後から考えればいろいろツッコミはできそうではあります。
また小道具として煙草が使われるなど、80年代後半という時代のギャップを感じさせられる部分はあってもミステリとして秀逸なのは確かでしょう。