8期・67冊目 『スケルトンクルー1 骸骨乗務員』

スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)

スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)

内容(「BOOK」データベースより)
7月19日のその夜、メイン州西部の全域が、未曽有のはげしい雷雨にみまわれた。嵐に脅える住民たち。だが、その後に襲ってきた“霧”こそが、真の恐怖だったのだ。その霧は街をおおいつくし、人々を閉じこめてしまう。奇怪な霧に閉じこめられた人々の動揺と冒険を描く中編『霧』、シカゴのやくざたちの結婚式で演奏したジャズ・バンドの災難『ウェディング・ギグ』、3百年前の鏡台の鏡の片隅に映る影『死神』など、恐怖小説の王者が贈る短編傑作集『スケルトン・クルー』からの第1弾。

スティーヴン・キングのホラー短編集『スケルトンクルー』シリーズの第一弾であり、5編の短編と1編の中編が収められています。
収録作品は以下の通り。
「握手しない男」
「ウエディング・ギグ」
カインの末裔
「死神」
「ほら、虎がいる」
「霧」
後からジンワリくる短編(ショートショートと言ってもいいくらい)もなかなかの出来で、個人的には「ウエディング・ギグ」がいろいろ「その後」の想像をかき立てるものがあって面白かったです。
でもやっぱりピカイチなのは最後の中編である「霧」でしょう。


主人公デヴィッド・ドレイトンはメイン州の避暑地の湖のほとりにて妻・ステファンと息子ビリーとともに住んでいる。
激しい嵐が周辺を襲った翌朝、自宅近辺の破壊の爪痕を見て回った際に、湖上に今まで見たことが無い濃密な白い霧が出現しているのを目撃して不審な思いを抱く。
そして妻を残して息子とスーパーへ買い出しに行くのですが、混雑した店内でレジ待ちしている最中にあの不気味な白い霧が辺りを覆い始め、デヴィッドらは出るに出られず店内に閉じ込められてしまうのです。


霧の中から巨大触手や異形の怪物が出現して人間を襲いくる。
それらとの戦いもすさまじいですが、何よりも閉じ込められた人間たちが見せる修羅場にはさすがに引き込まれるものがありますね。
過去のトラブルもあって地元民を敵視している隣人のノートンは現実を見ることを拒否して我が道を行く。
以前から迷信の塊であった老婆カーモディは古臭い終末論をかざして益々その狂信者ぶりに拍車がかかるが、絶望的な状況でそれに縋りつく人が徐々に増えていく。
狂信者たちが生贄、それも息子のビリーを欲していると知ったデヴィッドは信頼できる仲間と共に食料を確保して車で脱出しようと図るのですが・・・。


ゾンビ映画で出てくるようにスーパーマーケットというのは立て篭もるにはちょうど良い場所ではあります。
ただ、偶然そこに居合わせただけの人々がすんなり協力しあえるかと言えばそんなことなく。
得てして対立が起こったり、暴走して危機を招いたりするもの。
災害時には人間の本音が垣間見えると言いますが、まさに極限状況におかれた人間模様が赤裸々に描かれていますね。
霧や怪物などの背景の説明は無くて唐突に始まってますが、それが気にならないほど読ませる内容でした。