56冊目 『八八艦隊海戦譜 攻防編1』

八八艦隊海戦譜 - 攻防篇1 (C・NOVELS)

八八艦隊海戦譜 - 攻防篇1 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
米潜水艦の通商破壊に苦しむ日本海軍は、対潜機雷堰による蘭印の完全内海化を急いでいた。だがティモール沖を哨戒中の駆潜艇と米艦隊が衝突。救援に駆けつけた軽巡部隊が捨身の艦砲射撃で臨むなか、「大井」が敵重巡に魚雷を発射、辛くも撃退に成功した。しかしなおも米海軍の勢いは留まることを知らず、近代化改装された巡洋戦艦西進との報が。窮地に陥った南西方面艦隊を救うべく、八八艦隊が死地へと向かう。激闘の南海で、SG対水上レーダー搭載のレキシントン級と四六センチ砲搭載の劔型が激突!

緒戦の敗戦により主力戦艦が撃沈破された米軍は潜水艦による蘭印をはじめとする資源地帯の通商破壊を実施。
当然日本軍も駆潜艇などを配置して警戒するのですが、米軍は駆逐艦などの水上艦艇でそれを蹴散らした後に潜水艦を突入させるという戦法に出ます。
機雷堰による内海化を目指すも米艦艇の跳梁は止まず、相次いで巡洋艦駆逐艦同士の水上戦闘が生起、やがて改修によりSG対水上レーダー搭載のレキシントン級巡洋戦艦が回航されたとの報により、日本側も46センチ砲搭載の劔型巡洋戦艦が援軍として駆けつけ、ついに戦艦同士の戦いに発展していきます。
資源地帯を抑えた後の日米攻防の第一弾はオーストラリア北部を策源地として攻める米軍に対して、八八艦隊のほとんどが修理中につき、限られた戦力で守る日本軍という構図となっていますね。
一方、欧州ではUボートの基地であるキール空襲の報復としてドイツ空軍が英本国艦隊の本拠地スカパ・フローを奇襲。
撃沈こそ少なかったものの、その損害は無視できず、本国艦隊は避退します。
この出来事が結局航空機では戦艦に被害は与えられるが撃沈はできない。⇒英軍のタラント空襲計画の中止。英軍戦艦のアジア来援は無し。
大艦巨砲主義の作品世界に影響を与えていることが面白い。さりげなくヒトラーが東部戦線よりも対イギリス重視、そして勝利を得られなかった航空戦に代わる決め手*1について触れられていますしね。


日本軍に関しては今回はまずまずの戦いぶり。
雷装撤廃して砲撃に特化した奥入瀬軽巡重雷装艦・大井との連携プレーを始めとした水上戦闘が見ものでした。
ただし現時点では優勢を維持しているものの、肝心の戦艦同士ではレーダー活用によって先手を取られた点で不安が残ります。
それにアメリカは今後続々と新世代の戦艦が登場しますが、日本の方はどうなっているのか気になるところ。
更に最後になって米豪遮断作戦が浮上したことによって、『八八艦隊物語』を読んだ者としてはポートモレスビーの悪夢再び、としか思えません。
ちなみにその後の蘭印には意外な新兵器が輸送船によって搬入されたようですが、多島海での活躍を期待ということで、これは瀑竜*2を思い出しましますね。
『八八艦隊物語』では決戦兵器として使われて最初だけ活躍したけれども、今回は地の利を生かした活躍を見せるのか、それとも・・・?
時期設定を変えたことと補助艦船が一新されたことによって、リメイクの割には新鮮さはあるのですが、戦争の流れ的にはやはり似たような感じになってしまうのかなと思ってしまいました。

*1:おそらくV号ロケット

*2:いわゆる魚雷艇