最近読んだ漫画

遥かな町へ

遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル)

遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル)

48歳の既婚男性が出張のついでに故郷の墓参りをした際に34年前の自分自身にタイムスリップしてしまうという物語です。
もしも過去の自分に戻れたら?と夢想するのは中学生頃が一番多いかもしれない。
では実際に48歳の経験を積んだ中学2年生とは・・・?
体は軽いし、勉強の楽しみもわかる。長らく忘れていた友と過ごす時間。
主人公が本来の自分より若い両親を目の前にして感無量となるのはわかる気がするし、中学生であることを忘れてつい大人の感覚でお酒を飲んで酔っぱらってしまうところはお愛嬌か。
おまけに中学生らしからぬ言動のせいかクラスのマドンナ*1とも仲良くなれて、本来とは違った歴史を歩み始めるというのはお約束です。
そして何より主人公にとって大きな出来事はこの年の夏に父親が失踪すること。
その後の悲嘆に暮れた家族を知る主人公としては何とか失踪を阻止しようとするのですが…。


34年間のブランクは大きいですが、再び大人目線から体験する中学生活というのはある意味新鮮なんでしょうね。
当たり前のように過ごしていた学生生活や家族との日常がかけがえのないものであったことを気づかせてくれます。
そして何より主人公の故郷である鳥取県倉吉市を舞台に描かれる、郷愁溢れる風景描写が素晴らしいです。
過去への時間旅行は楽しいことばかりではなく、後半は大人の心を持っていたばかりに踏み込んで知ってしまった両親の事情が切ないですね。
現代へと舞い戻った主人公が真面目に家族と向き合うようになり、その不思議な体験が決して夢ではなかったことを知らされるラストの贈り物も良かったです。


ちなみにこの作品はid:Yoshiyaさんが以前はてなハイクで言及されていた気がするんですが…。気のせいだったらすみません。

新世界より』1巻

新世界より(1) (講談社コミックス)

新世界より(1) (講談社コミックス)

約4年前に読んだ小説版が非常に面白かったので、漫画化されている*2のを本屋で見かけて衝動買い。
1巻では小学校卒業から全人学級での班対抗呪力戦、そして夏季キャンプ。外来種のバケネズミに襲われ、塩屋虻コロニーのバケネズミ・スクィーラに救われるところまで描かれています。
ミノシロモドキによって禁断の知識に触れるところがなぜか省略されていて、だいぶ駆け足な展開です。
ヒロイン・早季*3や身近な人物である覚・瞬・真理亜は原作のイメージに近い感じ。
バケネズミはじめクリーチャーの不気味さは漫画ならではですね。
ただ、もともと恋愛・友情要素はあるにはあったけど、なんであそこまでエロを絡める必要があるのかがよくわからないです。
独特の世界観および今後の鬱展開に対して、可愛い女性キャラとのギャップ狙いはいいのだけど、いささか過ぎている感じがしますね。
さすがに原作の内容が完璧に漫画化されていると思ってはいなかったけど残念な内容でした。普通ならばもう続編は買わないつもりでいたのですが…。
現在3巻まで刊行されており、amazonのレビューでは1巻は散々ですが2巻の方がいくらか評価いいので迷うところですね。
やっぱりここはアニメ版を見るべきか。

『ブラッドハーレーの馬車』

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

とある時代のある国*4では、孤児院で暮らす十代の少女の中から年に一人だけ容姿に優れた者が選抜されてブラッドハーレー公爵家の養女となり、「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」への入団が許されるという制度があるという。
歌劇団は少女の憧れの存在であり、うまくすれば孤児という日陰の存在から一躍スターとしての脚光を浴びる生活に駆け上がれるかもしれないと誰もが期待に胸を膨らませる。
ところが、実際にブラッドハーレーの馬車に乗って孤児院を出ていく者と、歌劇団に入団する者とでは人数に開きがあった。
馬車に乗りながらも公爵家とはまったく違う行き先へと連れていかれた少女を待つ運命とは…?


背景として、刑務所における囚人の脱獄・暴動を防ぐため、年に一回孤児院の少女を供物としてその性的欲求・破壊欲求のはけ口とさせようという国を挙げてのおぞましい計画があることを知らされます。
その発案・実行者こそがブラッドハーレー公爵であり、実際に運営する歌劇団が餌になっているわけです。
とはいえ露骨な性・暴力描写こそ少ないです。
しかし第一、二話によって少女が辿る過酷で残酷な運命を知ってしまってからは、第三話以降のように一見切ない青春もののように描かれていようが、ヒロインの身の上に何が起こったのか容易に想像できてしまって辛い。


読んだらトラウマとなりうる、いわゆる劇薬漫画の中で入手しやすかったからって気軽に読んでみて、そのあまりにも鬱になる展開に後悔。
タイトル通り、ブラッドハーレーの馬車に乗せられた孤児院の少女の物語が八話収められており、短いながらもストーリーも趣向もよく練られていると思うのですよ。
ただ内容としての衝撃度は一、二話が頂点で、それを読んだ後は勢いも減じていき、最終話もあまり設定を活かしきれないまま中途半端に終わった感がありました。


この物語の結末には希望ではなく、絶望が待っている。
スゴ本にて紹介されていた記事を読んだ時点である程度予想はついていたのですが。まさにこれは読む人を選ぶ作品でありますね。
「ブラッドハーレーの馬車」に絶句する

*1:古い言い方だが昔はよくそう言ったね

*2:現時点で3巻まで刊行

*3:露出高めの衣装に違和感あるが

*4:出てくる語句からして20世紀初めのイギリスがモデルとなっている模様