8期・29冊目 『宇宙戦争1945』

宇宙戦争1945 (朝日ノベルズ)

宇宙戦争1945 (朝日ノベルズ)

内容紹介
昭和16年12月8日、謎の軍団が真珠湾に現れた瞬間から、
この世界は新たな歴史の「線」へと導かれた。
奇襲は先を越され、日米開戦は成らず……
シリーズ第一作『宇宙戦争1941』。<三本脚>の怒涛の侵攻を食い止め、人類はその力と叡智を結集できるのか…
第二作『宇宙戦争1943』。
そして今、決戦の時は来た。
荒波を押し分け進む巨艦の群れが、
人類の「D-Day」を知らせる号砲を撃ち鳴らす――。
「起こらなかった太平洋戦争」から始まった架空戦記シリーズ、堂々の完結編!

第二次世界大戦時の世界を舞台にした横山信義版宇宙戦争もついに完結です。
人類が初めて火星人との戦闘に勝利してルソン島を奪回するも、その喜びを打ち消すような悪い知らせが入ったのが前巻まで。
天体観測の結果、火星人の本隊が地球に迫っており、ボルネオ要塞から発せられている光線によって誘導・制御されているとの結論が出たとのこと。
イムリミットと見積もられた1945年11月上旬までに制御装置を破壊しなければ、今までを上回るであろう規模の火星人来襲によって人類は壊滅するであろうことは確実。
かくして世界各国は統合軍の名の元に結集してボルネオ要塞攻略のための一大反攻作戦へと進んでいった経緯が描かれます。
列国首脳が参加した会議ではヒトラースターリンまでもヒューマニズム溢れる政治家になって協力を誓ったのはどうにも違和感ありまくりでしたが(笑)


そして迎えたD-Day。
本来ならば世界各地の戦場で相見まえていたはずだった列強の軍艦や航空機が一斉に敵要塞に向けて進撃する様は圧巻の一言。
烈風、F7Fタイガーキャット、P-38ライトニング、P-65バファダー*1、P-47サンダーボルトなど。そして決戦機として用意されたのがあの空飛ぶ要塞。いずれもFSに対して有効な30mm以上の大口径機銃を備えています。
戦場が太平洋であることと、欧州各国は本国が火星人に侵略されてしまっている関係で航空機は米国製に偏ってしまい、当時の最新兵器勢ぞろいとはいかなくて残念でしたが。
登場人物については日本軍中心といえど当時の名の知れた軍人が多く活躍してかなり豪華でしたね。
空前の戦力で臨んだ決戦では人類側が国を超えて援護しあい健闘するも、火星人のトライポッド・FSの機動と熱戦砲には被害も続出。
著者の作品では沈まないと思われたあの戦艦*2までも犠牲に。
本命たる決戦機による大空襲も鉄壁の防空網に阻まれて制御器本体への接近もままならない。
果たして人類の存亡を賭けた決戦の行方は・・・?


さすがに著者らしく時代設定を生かした迫力ある戦闘シーンの連続。テンポの良い展開で一気に読み切りました。
ラストはやや綺麗事すぎるかなと思いましたが、三巻できっちりとまとめられたのは良かったですね。短くてもいいからこういったSF戦記をこれからも書いて欲しいと思います。

*1:FSに対して有効だった37mm機銃を装備したP-39の架空の発展型

*2:後日火星人のテクノロジーを得て宇宙戦艦にするんじゃないのか