8期・19冊目 『のぞきめ』

のぞきめ

のぞきめ

内容(「BOOK」データベースより)
昭和も残り少なくなった、ある夏。辺鄙な貸別荘地にバイトに来た成留たちは、禁じられた廃村に紛れ込み、恐怖の体験をする…(『覗き屋敷の怪』)。昭和の初期。四十澤は、学友の鞘落から、自分の家には“のぞきめ”という化物が取り憑いていると打ち明けられる。やがて四十澤は、鞘落家を訪ねるのだが…(『終い屋敷の凶』)。

趣味と実益を兼ねて怪異現象収集をしている筆者。
知人が昭和の終わり頃に体験した話を聞いてまとめたものの、なんとなく発表できずにした話⇒『覗き屋敷の怪』。
民俗研究家の四十澤想一が昭和初期、まだ学生だった頃に経験した怪異を事細かに記したノートを入手して・・・⇒『終い屋敷の凶』。
時代は離れてはいるがいずれも同じ場所にて「のぞきめ」に取りつかれた者が異様な死にざまを迎えるという怪異物語二本仕立てになっています。


前半の『覗き屋敷の怪』は非常に辺鄙なところにある貸別荘地の管理事務所にバイトに来た大学生の男女四人。
ピークが過ぎて空き時間を持て余した四人がハイキングがてら興味半分で「絶対に近づいてはならない」と言われていた山域に入り込み、廃村の不気味な屋敷に近づいた時に異変が起こる。
メンバーに次々と訪れる奇怪な現象・・・いったい何があったのか?
ホラー話にありがちなパターンですな。
そして『終い屋敷の凶』では大学で親しくしていた鞘落惣一からその出身地である村のことと、実家に隠された闇の歴史について聞き出すも、その後転落事故で命を落としてしまう。
盆になって帰省がてら鞘落の墓参りをすべく村を訪れた四十澤が鞘落家に逗留した中で遭遇した驚きの出来事の数々。
立て続けに起こる不審な死は何らかの祟りなのか?


いくつもの怪異や謎を残したまま物語は一旦幕を閉じますが、エピローグとして著者による二つの物語の解釈があり、それぞれに繋がりがあったことがわかります。
ホラーとして投げっぱなしにしないで、きちんと筋の通るようにしているのは好印象ですね。
冒頭に散々脅かされましたが、率直な感想としては内容自体はさほどの怖さは感じませんでした。むしろ代々の鞘落家が自ら抱えこんだ深い業のために行った行為こそが怖いと思ったり。
ただ、山奥の村独特の澱んだ雰囲気というか、閉鎖的な中に見え隠れしている悪意がよく伝わってきて、まるで自分もそこにいるかのような気にさせられたのも確かです。