8期・14冊目 『八八艦隊海戦譜 勇進編2』

八八艦隊海戦譜 - 勇進篇2 (C・NOVELS)

八八艦隊海戦譜 - 勇進篇2 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
日本海軍はトラック環礁、小笠原諸島沖と二度にわたって来寇した米艦隊を撃退。さらに陸軍第二五軍は破竹の勢いでマレー半島を進撃していた。そんななか、シンガポールを防衛する英東洋艦隊に増援の動きが。米国のダニエルズ・プラン艦にも匹敵するセント・アンドリュー級戦艦、インヴィンシブル級巡戦を含む艦隊が合流するというのだ。だがこれに対抗しうる八八艦隊の多くは今なおドッグ入りを余儀なくされている。増援が望めぬなか、旧式戦艦を中心とした第三艦隊が南方作戦を死守すべくマラッカ海峡へと向かうが…。

南方作戦もマレー半島攻略を残すのみとなっており、特にシンガポールの占領と英東洋艦隊の撃滅は重要目標。*1
当初は旧式戦艦2隻を主力とする英東洋艦隊に対して、八八艦隊以前とはいえ8隻の戦艦*2を擁する第三艦隊ならば問題ないとみられていました。
しかし欧州より日本の八八艦隊・アメリカのダニエルズプラン艦に相当するインヴィンシブル級巡洋戦艦とセントアンドリュー級戦艦を含む6隻の増援来るとの報が入るも、日本側は二度の海戦の結果、2隻の沈没艦を除いて八八艦隊の各艦は修理のためにほぼドック入り。
ほとんど被害の無かった第四戦隊(巡戦赤城型4隻で編成)も補給などが必要で間にあいそうにない。
かくして性能では劣ろうが数と地の利を生かして第三艦隊は迎え撃つわけですが…。


実際のところ、日本側は戦いの前から死亡フラグならぬ負けフラグが立っていましたね。
だいたいあの老嬢たちは、著者の描く作品では奮闘かなわずやられ役になることが多いです。扶桑の爆沈も、やっぱりとしか。
第1ラウンドのマラッカ海峡での夜戦では英艦隊が戦巧者ぶりを見せて優位に進めるも、混戦状態となって両者一旦後退。*3
そして第四戦隊の来援によって再編成なった日本艦隊と、いったん補給を済ませた英東洋艦隊とのシンガポール沖での再戦という流れになっています。


海戦描写については著者の得意分野だけに迫力あるシーン満載です。
そして今回はストックホルム条約による制限で兵装が簡略化された軽巡駆逐艦の奮闘。砲力は劣るものの、酸素魚雷の威力は健在。
前巻まではあまり見られなかった主力艦以外の戦闘描写に力が入っていたのが喜ばしい。
空母も海戦に参加するのですが、本当にこの世界では航空機は偵察と艦隊直掩と脇役に徹していますねぇ。


そういえば序盤では欧州情勢にも触れられていました。
バトルオブブリテンが史実通りと同様に推移した結果英本土上陸が断念したことが、今回の増援決定に繋がっています。
そして独ソの戦端は開かれず、ドイツは欧州の戦線維持に努める様子。
いささか日本の首脳よりもドイツのヒトラーの方が賢明に書かれているようなしますね。
そして今後の展開ですが、主力艦の多くを失い、あるいは長期間のドック入りを余儀なくされた米海軍は、快速艦を真っ先に修理させ、日本が確立した南方資源地帯との補給線を断ち切る戦略に出る模様。
日本軍もただ手をこまねいてはいないでしょうが、史実を見るに何やら嫌な予感がしなくもないです。

*1:そういえばABDA艦隊は一切触れられていないが、やはり戦わず撤退したということだろうか?

*2:伊勢、日向、山城。扶桑、比叡、金剛、榛名、霧島

*3:優勢な英艦隊は遠くトリンコマリーまで戻らず突破しても良かった気がするが、ストーリー上、次の見せ場のための時間稼ぎなんだろうな