7期・71冊目 『時空の旭日旗8 平行宇宙の1944』

時空の旭日旗―平行宇宙の1944 (歴史群像新書)

時空の旭日旗―平行宇宙の1944 (歴史群像新書)

内容紹介
欧州では同盟国である独・伊軍がマルタ島への侵攻を開始。連合国軍優勢であった戦線に変化が生じ始めた。これにより米軍の戦略も修正されたが、日本軍は「A情報」によりこの動きを事前に察知。東西の両戦線が絡みあう新たな戦局に、日本はどう対応するのか?

前回アッツ・キスカ撤収によって戦線縮小を図ったわけですが、苦戦続きだったアメリカ国内としては、その内容はともかく領土を回復した勝利として捉えられ、戦力充実なった米海軍は日本側の突出部分、すなわちウエーク島や千島列島といった前線基地への攻勢を呼び込んでしまいます。
ただし相次ぐ敗北とシーレーン崩壊によって戦力・物資が先細り状態であった史実と違って、まだこの世界では余裕があって速やかな回復と反撃が可能であることが伺えます。
しかし防衛する地域が膨大なのは変わらず、次の米軍の矛先はいずこか?


一方、欧州ではドイツ軍の東方戦線の戦略転換が地中海・アフリカ戦線にも影響を与えていて、イタリア降伏の呼び水となった連合軍のシチリア上陸はなされず、逆に独・伊軍が英領マルタ島への攻勢を強めているという状況です。
健在のイタリア艦隊に対するため、急ぎ海軍戦力の配置転換を行いたいイギリスとしては、日本軍の勢力圏と隣接しているインド洋が不安なわけで。
前門の虎に全力で立ち向かう前に、後門の狼を一発殴っておくみたいな?
そうして一発殴るにしては大がかりな連合軍の蘭印への大攻勢が始まるのです。
まさに地球の反対側でありながら、戦略的に連動しているさまが描かれていたのが今回の醍醐味でした。


日本側からするとアジア太平洋が中心になりがちですが、アメリカ・イギリスの立場からすると、欧州とアジア方面のバランスが重要。
無論、欧州方面が最優先になるのでしょうが、1944年当時ほぼ敗勢まっしぐらだった枢軸国(太平洋の制海・制空圏を失いつつあった日本、既に脱落していたイタリア、各方面で敗北を重ねて本土近くまで攻勢を受けていたドイツ)が史実とかなり違う状況なので、当然連合軍が取る戦略も変わってきてる。
そのあたりで今後の戦争の行方がどのようになっていゆくのかは気になりますね。というか8巻で膠着状態っぽのをどうやって収めるのだろう?
後半に始まった蘭印での戦いが今後の戦略の分かれ目となるような記述があったので、少なくとも対日戦は講和に向けての道筋が作られるのかなって気はします。