6期・68冊目 『宇宙戦争1941』

宇宙戦争1941 (朝日ノベルズ)

宇宙戦争1941 (朝日ノベルズ)

朝日ノベルズ公式サイトの紹介より)
1941年12月8日、ハワイを目指す帝国海軍機動部隊が目にしたものは、炎上する真珠湾と、蹂躙される米太平洋艦隊の姿だった──! 突如現れた“異形”の正体とは? その圧倒的な力に、世界はどう立ち向かうのか。架空戦記新シリーズ、開幕!

タイトルの通り、ウェルズの『宇宙戦争』のオマージュとなっている作品。
それをちょうど太平洋戦争開戦時にもってきて、著者得意の架空戦記路線というか、SF風の架空戦記ですな。*1
41年前にイギリスに来襲したとか、架空の軍艦サンダーチャイルドの活躍とか、『宇宙戦争』での世界観がそのまま生かされているので読んでいた方が楽しめるらしく、名前は知っていても読んだことがなかった私は読了後に調べた次第。
wikipedia:宇宙戦争 (H・G・ウェルズ)


冒頭では真珠湾に到達した第1次攻撃隊が目にしたのは3本脚の戦闘機械(トライポッド)。米太平洋艦隊および基地・港湾を蹂躙するどころか、日本軍へもその正確無比な緑色の光線で攻撃を向けてくる。20ミリ機銃も、250kg爆弾も効かず、魚雷は標的が小さすぎて当たらない。さすがに精鋭を誇った攻撃隊も未知の兵器相手に半数以上を撃墜されてしまう。
フィリピン、マレー半島にも同様の三本脚、さらには空を飛ぶ円盤まで出現し、同方面の米英軍は壊滅の危機に瀕する。
その後状況が明かされて、襲来したのは火星人であり、欧州ではロンドン・ベルリン・モスクワと首都を直撃して戦争継続どころではないという。
太平洋方面ではまさにこれから日本軍が進撃しようと思っていたところに出現するというのが不思議でもあるのですが…。さらに先を越されるように蘭印の資源地帯も続々と侵略されてしまうんですね。さすがにこれは狙ってやってる感が。


戦闘シーンはとにかく兵器のテクノロジー差が隔絶していて相手にならないのですが、トライポッドに関しては、戦艦・重巡クラスの主砲ならば傷を負わせることができるレベル。円盤(空飛ぶエイ)も機銃はきかないが体当たりでなんとか撃墜できるという。その前に光線によって損害が続出なんですが。
架空戦記界の中でも自虐ぶりに定評ある(笑)横山信義氏によるやられっぷりがこれでもかとばかりに見られます。
あまりに強すぎる敵に今回ばかりは各国も手を結ばねばならぬ展開になり、今後はいかにして立ち向かっていくかが描かれるのではないかと。史実と違って兵器体系も変わっていき、鹵獲して対トライポッド用兵器とか開発されるのでしょうか。
元ネタと違って世界中を舞台にしていますが、たぶん日本軍がメインになるんでしょうね。早速フィリピンの避難民救出にて米軍と協力して戦う機会もあったり。
ただヒトラーのドイツだけは沈黙を結んでいるのが不気味ですねぇ。火星人対人類という構図になんらかの影響を与える役割があるような気がしてならないです。

*1:中公では架空戦記の本道を走ってるけど、他の出版社では『擾乱の海』のように違う路線を目指しているみたい。思い切って架空戦記から離れた作品を書いてもいい気がするけど