6期・67冊目 『アーサー王宮廷のヤンキー』

出版社/著者からの内容紹介
そもそものはじまりは、喧嘩っぱやいヤンキーが頭にくらったバールの一撃。正気にかえると、なんと時は伝説のアーサー王の御世。背広姿を怪しまれ、たちまち囚われ死刑の宣告。科学を駆使しアーサー王と円卓騎士団をけむにまくヤンキーの活躍やいかに? マーク・トウェインがSF的発想で描いた、ユーモアにみちた異色作。完訳決定版!

タイムスリップものの元祖とも言える本作。意外(?)にも「トム・ソーヤ」や「ハック・フィン」で有名なマーク・トウェインが書いていたと知ったのは近年のことです。
日本でも昔からいくつか訳本が出ていたのですが、現在入手可能なのが2009年に出た角川の文庫のみのようです。


19世紀の兵器職人である主人公は喧嘩で殴られた拍子になんと6世紀のアーサー王の時代*1にタイムスリップしてしまういます。
早々に騎士に決闘を申し込まれて、訳わからず逃げてたらいつの間にか捕虜扱い。城まで連れてこられてアーサー王や円卓の騎士にご対面してようやくタイムスリップしたことに気づくのですが、すでに処刑目前。そこで偶然にも日蝕があることを思い出して*2、魔法を信じ込ませて窮地を脱するわけです。
その後、大魔法使い・マーリンとの対決があったりするものの、現代(といっても19世紀の)科学技術知識と弁舌を駆使して王の信頼を得て宮廷での地位を確立する主人公。
そのあたりがタイムスリップ話にはありがちとはいえ、ハラハラドキドキの展開です。


その後、あまりに野蛮かつ非人道的な6世紀の状況を見るに連れて、社会改革に着手する主人公。密かに学校や工場を作り、身分を問わない人材を登用。あまつさえ電信電話や広告・新聞にまで着手するという気宇壮大さを見せます。
材料とか加工はどうしたのかと突っ込みたくなりますが、これが21世紀ではなくて19世紀の職人ゆえに案外手作りでなんとかやってしまうのかもしれないですね。誤字や文字が逆さになった紙面が雰囲気出しています。


最大の問題である身分制度の改革のため、アーサー王と一緒に低い身分についやして旅に出るわけですが、そこでもなかなか下々の習慣を理解できない王に説得したり、奴隷にされて危うく命を落としそうになったりと苦労が絶えない(笑)
しかしその甲斐あって王の理解を得て、主人公の国をあげての改革が着実に進み、良き伴侶を得て子にも恵まれてめでたしめでたし・・・。
と思いきや、最大の敵が待ち受けていて、終盤は怒涛の展開を経て結末はプロローグに繋がります。そして時が分かつ運命にちょっとしんみりきます。


今となってはベタでご都合的ではありますが、当時として画期的な発想だったのでしょうね。主人公の台詞を借りた文明批評やユーモアにニヤリとさせられることも。ただ中盤あたりまで会話や引用部分が長くてちょっと読み飛ばしたくなったりもしました。背景となったアーサー王の伝説を読んでいた方がもっと楽しめるのでしょうね。

*1:史実というより伝説に近い

*2:普通覚えてないよ(笑)