6期・58〜62冊目 『漂流教室1〜5』

wikipedia:漂流教室
私が同タイトルのコミックを読んだのはもう20年くらい前になります。その頃から意識していたかどうかわかりませんが、タイムスリップもの・パニックものに惹かれていたようで、小学校自体が異世界*1にとばされ、児童たちが狂った大人や怪物に翻弄されながらも懸命に生きていくというストーリーに衝撃を受けつつ読んだものです。
その割にはラストがどうなったのか覚えてなくて(途中までしか読んでないのかもしれない)、以前人力検索はてなで小説化されているのを知ったのですがなんだかんだで放置してて、ふと最近になって読みたくなり入手した次第です。


小説版を読み始めてみると、思わず懐かしく思えてしまうほど原作漫画をほぼ忠実に再現していますね。昔読んだ漫画のページが目に浮かぶほどです。
少年向けを意識されているとはいっても充分大人でも楽しめる内容は変わらず。次々と起こる騒動に主人公・高松翔らだけでなく読者も振り回されます。
でも楳図かずお漫画の特徴ある効果音や台詞は小説版では抑えてある気もします。

1巻

主にタイムスリップ前夜と直後の混乱が描かれていて、大人たちが壊滅するまで。
給食のおじさんこと関谷の食糧独り占め騒動に始まって、一番しっかりしてそうだった若原教諭が殺人鬼と化し*2、本来児童たちを守り導くべき教員が混乱の中で全滅してしまいます。関谷と若原以外の大人がまるで空気のような存在です。
それにしても高松翔と母親が互いに相手のために買ったものが届くことなく、当日朝口喧嘩の末に家を出て行ったまま離れ離れになって始まる出だしが秀逸ですね。
それにダイナマイトやリスなど後々問題となりそうな行動が伏線となっていて気になります。

2巻

奇怪な森と謎の怪物登場。
教員が全滅した後、早速女番長によって分裂の危機に陥る大和小学校の児童たち。
でも女番長らの決別後はこの世界で生き抜いていくべく国を模して内閣制を取ったり食糧制限したりなど、この頃は団結しようという様が見られます。
しかし砂漠に急きょ出現した怪物はあまりにも強敵でした。罠を張ったり武器を用意するも敵わず次々と犠牲者が続出。しかし怪物の出現・行動パターンからある可能性に気づいて・・・。*3
残酷な死がこのあたりから一気に増えてきた気がしますね。それによって児童たちもその後良くも悪くも変わっていくのですが。

3巻

伝染病の恐怖と内戦の巻。
ある生徒が持ち込んだ外国土産のリスに引っ掻かれていたことから始まったペスト禍。現代日本においては早急な対処さえできれば治せなくはないのですが、異世界に飛ばされた大和小学校の児童たちにはあまりに過酷な試練でした。
伝染病の発生は感染者の排斥と憎しみを生み、初期患者との接触により感染の疑いが生じた高松翔らは校外へ。病院の地下室にてミイラを発見したことから展開が開けていきます。
本格的な児童同士の争いのすさまじさと、子の生存を信じ奔走する翔の母親の本気が印象深い巻でしたね。

4巻

未来キノコや未来人間の登場。
恵みの雨が降ったはいいが、それは山津波を発生させ、奇怪なキノコが生えてそれを食べた児童がおかしなことになったり、幼児退行化していた関谷の覚醒。
食糧危機が本格的になっていた大和小学校にこれでもかと恐怖と混乱が押し寄せます。
翔らが地下鉄構内を進むうちにかつての人間の儀式を行う未来人間たちを見つけ、人類がどうなってしまったのかが明かされます。
そういや、環境破壊が続いたらどうなるかということは昔からさまざまなメディアで言われていたことなんですよねぇ。しかし緑も水も無い、ここまで荒れ果てた世界において、子供たちだけで生きていかなければならないというのは過酷過ぎます。

5巻

高松・大友派の抗争と富士大レジャーランド・天国行の巻。
爆弾でタイムスリップを仕掛けたという言いがかりが発端で高松・大友派に分かれて本格的な抗争。子供であろうと、いや子供たちだけだからこそ生き残りには容赦ない展開になるんでしょうかね。
その一方で翔は盲腸にかかり、学校にあった器具で手術を行うという試練まであったり。
瀕死の状態で学校に戻ってきた女番長の最後の言葉と毒ガス・スモッグに襲われた翔たちは学校を捨てて富士山そばのレジャーランド・天国を目指します。*4
巨大な地割れを跳び越える試練があったりしてなんとか協力しながら辿り着いた翔たちですが、そこで抗争が再燃。更にレジャーランド内では、壊れたロボット達が襲いかかってきてカオス状態。まさに昔の未来SFのパニック展開がてんこもり。
実は4,5巻に入ると残酷表現がエスカレートしていくのですけど、漫画よりも小説の方がさらっと読めてしまう気がしますね。


そこでコンピューターから再度のタイムスリップの可能性を知った翔は学校へみなを連れ戻すことを決意します。
意識を失った状態の西あゆみの超能力によって現代の母との交信。大友らと和解して皆で協力してダイナマイトによる爆発をきっかけに人為的にタイムスリップを起こそうと試みるわけです。
結果的に現代に還れたのはユウちゃんだけだったものの、翔の母を始め現代の人々の思いが翔たちに通じて、荒廃した未来で生きていこうと決意するラストとしてうまくまとまったと思います。終盤はちょっと駆け足っぽくなった気がしないでもないですが。

*1:途中未来と明かされるが、核か異常気象がもたらされたような異質な世界

*2:漫画だと無表情のまま殺すシーンがかなり怖い

*3:漫画読んだ時、妄想オチというのは衝撃的ではあってもちょっと納得いかなかった覚えがある

*4:食糧も水も極めて少ない状態であれだけ色々あったらいつ衰弱死してしまっておかしくない気がするんだけど