6期・32冊目 『六点鐘は二度鳴る―自選短篇集歴史ミステリー編〈2〉』

出版社 / 著者からの内容紹介
史実の謎に挑戦する歴史ミステリー集第2弾

 織田信長本願寺との和平秘密交渉役が暗殺された! 事件の謎を解く鍵は、信長自らによって六点鐘と名付けられた南蛮式時計にあった・・表題作を始めとする、織田信長が次々に謎を解く「信長探偵帳」を中心に、剣豪・宮本武蔵が推理を巡らす『妖魔を斬る』、大阪夏の陣片桐且元が陥ちた罠を描いた『抜け穴』までを収録。史実の裏に挑戦する異色の歴史ミステリー短篇集第二弾。

井沢元彦は独自の歴史観に基づいた歴史評論をたくさん出していて、まぁそれはそれで面白いのもあればそうでもないのもあるんですが、出世作『猿丸幻視行』を始めとする歴史ミステリ小説こそが真髄だと思ってます。
今回は「信長探偵帳」を中心に剣豪・宮本武蔵がある剣士の死の謎を解く「妖魔を斬る」。そして大阪夏の陣直前に淀君らから忠誠を疑われた片桐且元が城からの脱出を描いた「抜け穴」が収録されています。


「信長探偵帳」シリーズは信長の身の回りで起こった不可思議な出来事を取り上げています。それも当時ならば神仏の天罰や祟りなどで済まされそうなことを合理主義かつまやかしを嫌う信長がその真実を探るという内容になっています。
探偵役が織田信長であるということが一番の特徴ですが、続けて読むとシリーズものの弊害としてやはりパターン化は免れないですね。だいたいが殺人事件が起こる⇒信長自身の謎解き⇒黒幕は反織田勢力(本願寺とか)といった流れ。
まぁ織田信長の天下統一事業を時系列で追って様々な場面が舞台となっていますので、歴史とミステリを同時に楽しめるのは確かです。
この中では歴史小説では脇役として描かれることの多い片桐且元を主人公に添えた最後の短編「抜け穴」が特に良かったですね。
大阪城攻防を巡る謀略に翻弄された老将。最後に家康が漏らした城の攻略方法に関する述懐が興味深い。
こういういかにもありそうな歴史秘話は歴史ファンにとってたまりません。