TBS「日曜劇場『JIN-仁-』」(完結編)第6,7話

見出したら面白いのですが、つい見る機会が遅くなってしまいます。
完結編も後半に入って、あの龍馬暗殺の件が見えてきましたね。

第6話

ペニシリンの普及のため長崎の精得館で講義をする南方仁大沢たかお)。実は長崎まで来たのはペニシリンを広めるだけではなく、坂本龍馬内野聖陽)に会い暗殺の事を伝えようと決心していたのだ。
龍馬に会えず半ば諦めかけていたその時、突然仁の前に龍馬が現れる。ようやく龍馬に会うことが出来たと喜んだ仁であったが、そこで出会った龍馬は仁の知っている龍馬ではなかった。龍馬はトーマス グラバー(ウィル・ゲラック)から武器を手に入れ、幕府と戦争をする長州に武器を売って金儲けをしていたのだ。複雑な気持ちのまま、龍馬と共に長州を訪れる仁。
そこで目にしたのは、龍馬が売ったと思われる銃に撃たれた、幕府軍の大量の死傷者の姿だった。その戦場を冷ややかに見ている龍馬…。
少しずつ、少しずつ近づく龍馬への闇。
果たして、仁は道に迷う龍馬を救う事が出来るのか!?
第6話あらすじより

JIN-仁-』長崎編ともいえる今回は初めてお雇い外国人との接触がありましたね。*1当時の様々な学問・技術はほぼ西洋が最新であり、医療も例外ではありませんでした。そこで留学経験も無いのに近代的医術を習得している仁を胡散臭いと思うのは確かでしょうねぇ。記憶喪失ということで笑って誤魔化していましたが、仁としても苦しいところ。
しかし実際にオペを見てその腕の確かなのを認め、一転して協力的になってめでたしめでたしでした。
あと、からくり儀右衛門ごと田中久重も登場しましたね。原作以上に会話が増えていたのはスポンサーである東芝の創設者とされているから、というのは邪推かな(笑)
それ抜きでも、仁から豆電球を渡されて田中が目を輝かすところはなかなか趣のある場面でした。


そして長崎で龍馬に偶然会うことができて狂喜する仁。しかし何やら隠し事しているらしい。なんだかんだありましたがあの写真を一緒に撮っちゃってるよ(笑)
酒の席でペニシリンを使った医療は当時としては高額になってしまうことから「保険があればなぁ」とつい漏らしてしまい、その仕組みを説明してすぐに理解してしまう龍馬はやはり並大抵の武士じゃないですな。しかし暗殺のことを伝えようとするとあの頭痛が・・・。
未来の様子を教えることはできても、未来を変えることに繋がることは言えないようになっているのかと悟る仁。ということは今まで仁が施してきた医療行為は歴史の大勢に影響あることではないということになりますね。


JIN-仁-』のなかでは南方仁が医療を通じて歴史上の有名人物に出会うという楽しみがあるのですが、中でも特別扱いなのが坂本龍馬
客観的には史実に沿っているとはいえ、龍馬の考えに仁が多大な影響を及ぼしそれが行動に出ていると言えます。特にドラマではそれが顕著になっていると感じていました。
今までは互いに刺激し合うと同時に助け合っていた仲とも言えるのですが、薩長同盟・倒幕という歴史が大きく動き出す時期にその渦の中心に身を投じている龍馬と現代人で医者である仁とのズレが如実に現れた回でありましたね。


長州へと赴いた先では第2次長州討伐の最中。龍馬の提供したと思われる武器と訓練された農民兵が火力を活かして藩兵で組織された旧装備の幕府軍を圧倒する。
そこに新たな時代、後世の言い方でいえば革命性を見出した龍馬に対し、同じ日本人が殺しあう様を悲しむ仁。一言で言えば生まれた時代の感覚の差が大きく表れていました。
あくまでも幕府を倒して新たな時代を迎えるための犠牲と割りきれる龍馬と仁は相容れることができずに別れたのですが、確実に仁の信念は伝わっていた模様。
ただ、それが龍馬の今後の行動に指針を与えた結果*2、暗殺へと繋がるのではないかと思うのですが。

第7話

坂本龍馬内野聖陽)と気持ちがすれ違ったまま、長崎から江戸・仁友堂に戻った南方仁大沢たかお)。その頃、龍馬に関する事を探るように上役(中原丈雄)から命じられた橘恭太郎(小出恵介)は、探りを入れるため、度々『仁友堂』を訪れていた。
あらためて“龍馬暗殺”がいつだったか思い出そうとする仁だったが、正確に思い出せない。とその時、またしても頭痛が仁を襲うのだった…。
そんなところへ、野風(中谷美紀)から仁と橘咲(綾瀬はるか)宛ての文が届く。そこにはフランス人・ルロン(ジャン・ルイ・バージュ)と正式に国際結婚できることが決まり、2人に婚礼に来て欲しいという旨が記されていた。かくして婚礼に出席するために横浜の野風の元へ向かった2人だが、そこで仁は、野風から診てもらいたい病人がいると告げられる…。
第7話あらすじより

薩長同盟から討幕への動きを見せる坂本龍馬の監視体制の一環として、親しい南方仁を見張るように命ぜられる橘恭太郎。
そして結婚式の招待と合わせて野風の乳がん再発と妊娠を知る・・・。
今回はほぼドラマオリジナルのストーリーとなりますが、ドラマを見ている人にとっては力入った作りとなっていましたね。


龍馬からの手紙は一見薩長による討幕を匂わせるものでした。仁の想いは伝わらなかったのかと落胆します。合わせて討幕に土佐を引き込もうとするシーンが描かれるあたりはそう思わせますね。
もっとも土佐藩山内容堂始め上層部は佐幕、下士は攘夷と真っ二つに分かれて抗争していた時期があったことは龍馬に興味ある人にとってはよく知られていることです。なんだかんだあって大政奉還へと進むのですが、ここでは少なくとも戦の無い未来への道として仁から龍馬への影響が少なからずあったと示唆されているようです。しかし暗殺の日を思い出そうとするとあの頭痛が襲う。歴史の修正力というより、仁を史実通りに進ませるために利用するものの、決して道を外させない強い力を感じさせています。
うーん、こうなると実際龍馬の死はどう描くのだろうか気になります。


さて、ルロンの屋敷に呼ばれて歓談するあたりは、仁と咲さんの関係でちょっと微笑ましいものがありましたね。つい洋酒を飲みすぎて酔っぱらってしまう咲さんかわいい。そして仁に向かって意味深な言葉を口にする。

「わたしはオババになってしまいますよ。元々オババのオババですけどね。

この時代の結婚適齢期は十代後半だったことを思うと、本当にオババになってしまうぞ。
それにしても仁が未来からきたことをほぼ見抜いた野風はするどい。まぁあの時代にコーヒーやシャンパンを平然と飲める方が不自然ですけどね。
そして野風は癌の転移によってあと2年しか生きられないかもしれない(5割)ことを知って、子が生まれること、その子の笑顔を見られること、もしかしたら手を繋いで歩けるかもしれないと安堵する。現代と違って命の重みが違う時代に生まれて、一度仁に救ってもらっただけに生きて子をなすことができることの想いが強いのでしょうか。野風の夢は子孫を通じて未来を生きること。なるほど、オリジナル設定をそうやって繋いだか。



専門では無いながらも、また医者としての判断よりも、野風の強い願いを受けて出産を手助けすることに決めた仁。ただし癌の転移が進行中の野風の分娩にはこの時代では技術的には有りえない帝王切開を選択せざるを得ない。またもや難問ですね。野風ではなかったけれど原作漫画でも初の帝王切開は行いました。ただ楠本イネ*3の手助けがあったし、歴史を変えるかもしれないことへの怖れはありませんでした。さて次回はどうなることでしょうか。

*1:原作では既に横浜で会っていて海外招聘の話が持ち上がるけどドラマではカットかな

*2:大政奉還とかね

*3:シーボルトの娘で産科が専門