TBS「日曜劇場『JIN-仁-』」(完結編)第4,5話

録画分を見るのが遅くなってしまいました。
この時代の技術では治療困難あるいは不可能とされる患者が仁の前に現れ、その困難に立ち向かうエピソードが続々と登場します。それを今までの経験や周囲のサポートによって治療に生かしていくさまがこの作品の面白さでもあります。さて今回は…。

第4話

時は経ち、薩摩藩預かりの身となった坂本龍馬内野聖陽)は、仲間と共に『亀山社中』という海運商社を立ち上げる。さらに、同じく土佐の脱藩浪人で、長州藩の預かりとなっている中岡慎太郎市川亀治郎)と出会い、意気投合。2人で長州と薩摩の和解を目指し、走り回っていた。
ある日、ペニシリンの粉末化を模索している南方仁大沢たかお)のもとへ、多紀玄叙イ(相島一之)がやって来る。幕府筋からの依頼で、川越藩主の妻・恵姫(緒川たまき)のこぶを治療して欲しいと言うのだ。その依頼を引き受けることにした仁は、橘咲(綾瀬はるか)と川越へ向かう道中に立ち寄った宿で、お初(畠山彩奈)という少女に出会う。仁はお初と触れ合った瞬間、電気が走ったような不思議な感覚を覚え…!?
川越藩に到着し、早速こぶの治療にかかろうとする仁は、恵姫から「治療は無用」と拒絶されてしまう。その後、咲の説得もあり、なんとか治療を受け入れてもらえることになるのだが、結果、恵姫のこぶは良性のもので、手術をすれば取り除くことができると判明する。しかし、貧血の気がある恵姫の手術には、失血死の可能性があり…!?
第4話あらすじより

前回の和宮様の縁で治療依頼が来て仁友堂は先生たちに預け、咲さんと川越藩へ赴くことになります。このあたりでさらりと現代とは事情が違うところ*1に触れられているのが面白い。さらに宿泊先の宿ではそこの少女と手が触れた途端に電気が走ったような不思議な経験をします。現代人である仁としては「静電気?」と首を捻るのですが・・・。
それと並行して竜馬は亀山社中立ち上げがあり、中岡慎太郎との出会いから薩長同盟へと奔走する時期でもあります。
このあたり、それぞれ独立したエピソードとしてできそうなくらいの話を同時展開なので見ている方もけっこう忙しいですね(笑)
完結編に入ってますますハイテンポになって息つかせぬ展開になってきたような気がします。


藩主正室・恵姫の治療にあたっては、和宮様から拝領した櫛と咲さんの説得が功を奏します。女性でありながら医学知識を持って血液型の説明をする咲さんに恵姫もびっくり。たしか原作では楠本イネ(シーボルトの娘)が登場していますが、近代医学における女医はまだ登場しなかった時代ですしね。*2
手術決行となり、万が一のための輸血にために呼ばれた親族たちですが、血を抜くことに対する拒否反応を起こすのは致し方ないでしょう。しかし同時に家門の血を受け継いでいくというのもこの時代の武家にとっては重要なことであり、逆に団結したりもできるのですね。


さて、仁に関わって以来、結婚と医学とのはざまで揺れ動く咲さんの本音が見えたり、今度は逆に恵姫から諭されたりと微笑ましい場面があって、復路ではこの二人どうなる?ってところで、紙飛行機を追ったお初が転落して大怪我をしてしまうのです。
またしてもお初の手に触れるとビビっと電流が流れたような感覚。なんらかの運命を感じてしまうというわけですが、ここで効いてくるのが冒頭の「この世界の何処かには、確実に俺の先祖がいる。もし俺が、自分の祖先と関わってしまったらどうなるんだろう。」という仁自身の台詞なのです。この不思議な現象がお初が仁のご先祖かもしれないと思わせて次回へと続くわけですね。ちょっと飛躍がありそうな気がしないでもないですが、まぁタイムスリップではお約束。むしろ治療して命が助かりそうだというところで仁が消えてしまったことの方がよっぽど気になりますわな。

第5話

南方仁大沢たかお)が旅先の旅館で出会った少女・お初(畠山彩奈)。そんなお初が、折り紙で遊んでいる最中に、転んで大怪我を負ってしまう。
すぐさま橘咲(綾瀬はるか)とともにお初の治療にとりかかった仁だが、咲の目の前でなんと自らの身体が消えていってしまう!その瞬間、仁はあるものを目撃して…。
第5話あらすじより

お初の手術中に突然仁の体は透明となって時を超えていく。そこで見たものはお初から始まる未来のようでしたが、それは南方仁につながるものではなかったのでした。
ここでお初の命を助けることは仁の存在が危ぶまれることに。まさに神の作為を感じられたエピソードでしたね。
一方、坂本竜馬は史実通りに寺田屋で襲われ危ういところを生き延びます。戦闘中の東修介の表情がちょっと思わせぶりでしたね。竜馬の護衛に三吉慎蔵に加えて東修介が加わっていることに今後も注意ですよ。*3新撰組との関わりはこれからでしょうか。


この後は澤村田之助の依頼があって歌舞伎役者・坂東吉十郎(大和屋)の鉛中毒治療の話が描かれました。
ここでは「(この時代の医療技術では)絶対無理」と匙を投げかけた仁に対して、まさに役者に命をかける田之助や吉十郎の役者魂によって気持ちを動かされることになりました。
言ってみれば延命を第一と考える現代治療の申し子である仁ですが、ほんのわずかな時間でも確実に生きた証しを与えることに意味を見出すということをこの時代に人々によって教えられているという感じですね。
咲さんが手術だけでなく、心理面でもいいサポートしてるし。まさに医の仁を実践しているなぁと思いました。
ラストですが、父子の絆という意味ではあれも一つの表現でしょうが、原作の通りに吉十郎に晴れ舞台を踏ませてあげれば良かったのに、というのが惜しい点でした。

*1:徒歩が基本の江戸時代においては、現代人男性である仁よりも女性である咲さんの方が健脚だったり、この時代に夫婦でない男女が二人で旅行するのはあり得なかったり

*2:まだ先の話だけど、この世界では明治になって仁友堂のもとに荻野吟子(近代日本における最初の女性の医師)が学びにきたりして

*3:これはドラマオリジナル設定