『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』

映画「クレヨンしんちゃん」DVDが1,890円に 16作品を11/26再発売
これを機に購入を即決したのが、「オトナ帝国の逆襲」*1と並ぶクレしん映画の名作・「アッパレ!戦国大合戦」。考えてみれば大人一人の映画チケットとほぼ同額なんだよなぁ。

実はすでにテレビ放映時とレンタルと合わせて2回は見ているのですが、クレしん映画の中では大人向けとも言える内容だけに、幼稚園時代からのクレしんファンの娘といえどあまり良さがわからなかったらしい。だけど小学校にあがった今なら楽しめるかな、と。いや実は自分の方がまた見たくなって買ったと言っても過言ではないのですが。


で、観てみました。
日常に「死」がさりげなく存在する戦国時代。*2それゆえか、現代の野原一家に比べればやや落ち着き払っている感がある春日の人々ですが、そこにタイムスリップしたしんのすけが自然に受入れられているのが考えてみれば不思議でもあるけど、まぁ難しいことは抜きで。
未来の様子を聞いた城主・春日康綱が強国・大蔵井と廉姫との婚約話を破棄。それを口実に大軍が攻め寄せてくるという流れなんですが、実は体のいい併呑に対して揺れていた康綱らの態度を決定づけたという裏設定があるのだと思ったり。そうでなければ領国の命運を余所者の話に委ねたりしないでしょうね。いわば神託としての役目なんだろうなぁと。
そして迫力満点の戦のシーン。3回目にも関わらず、やっぱり「野原一家、ファイヤー」と戦場に突き進む箇所は熱くなる。そして個人的におおいに気に入っているのが大蔵井高虎の本陣のシーン。他映画と比べると少ないひろし&みさえの見せ場ですね。
ところで今回も娘と一緒だったのですが、以前のように途中で飽きることなく、内容についていろいろと話しながら観ていられましたね(いつも見ているテレビ版ほどしんのすけのギャグに笑える内容ではなかったけど)。
さすがに最後のシーンではさすがにシュンとなっていましたけど、その結末の重々しさの意味を少しは感じてくれたのかもしれない。


ところで、当作品が子供向けアニメと馬鹿にできないほどの完成度の高い作品であることはよく知られていますね。
使用している武器・装備の描写や、時代劇ドラマにありがちなチャンバラの延長のごとき乱戦シーンではなく、きわめて組織だった戦闘ぶりを見せる合戦場面、それに城や住居、登場人物の背景など実に細かい部分に時代考証が為されていることは世の戦国ファンも満足するほど。
それに加えて、しんのすけが一人タイムスリップした後、その行方を捜すひろしが残された手紙を元に図書館で検索すると「天正二年*3に野原信之介のその一族が奮戦」と記載された史料を見つけたこと。すでにここで家族もタイムスリップすることが歴史に組み込まれているというのが自然な流れになっていて巧いなぁと思いましたね。
そして最後に又兵衛が狙撃されるシーン。子供向け映画なのに泣かしてどうするという意見もあったそうですが、本来は序盤のシーンで死ぬ運命だった又兵衛がしんのすけによって国を守る役目を果たせた*4、それが終わったことを示していて悲しいけれど納得の結末です。
しんのすけが歴史に介入し、その足跡を残したものの、大きな歴史の流れは変わることなかったということなんですね。
その後、廉姫は父の跡を継ぎ、妙印尼や甲斐姫の如き活躍で城を守っていたりして・・・と勝手に後日談を妄想したりして。
wikipedia:甲斐姫

*1:こちらは以前購入済み

*2:主な登場人物はいずれも身内を戦で亡くしている

*3:1574年。主な出来事としては、長島一向一揆鎮圧。ちょうど第一次織田信長包囲網の終盤。

*4:廉ともわずかながら心を通わせることができた