地名の由来で思い出した戦国時代の逸話

平安京を文字通りに読むと、「平安の都」。エルサレムは別説もあるものの「イール・シャローム=平和の都」。 こんなふうに、もともとの地名から名づけられたのではなく、よい「意味」の名前が新たに付けられた都市名とその意味を教えてください。 都市レベルなので、「自由が丘」などは小さすぎます。また、ニューヨークはヨークという地名が先行しているので該当しません。今回は人名にちなむものも除外してください(レニングラード等)。
上記の質問を見て、織田信長が築城した安土城。それは王城の都であった京(平安京)に対抗して、「平安楽土」から「安」・「土」を取り、これからの日本の首都となることを目指していたのではないかという説があったことを思い出しました。
もっともそれは井沢元彦が著書『逆説の日本史』で唱えている他は、ネット上でちらほら書かれているのを見かけましたが明確な裏づけがあるわけではないようです。
http://www42.tok2.com/home/hakubutukan/omi/aduchi.html
しかし進取の気風に富み、開明的な政策を次々と行った信長なら有り得そうな話ですね。
ちなみに信長といえば、美濃を制圧した後に本拠と定めた稲葉山城を「周の文王岐山に起って天下を定む」という故事から岐阜と改名したことは有名ですね(阜は丘の意)。


織田信長に影響されたのか、その後の大名の中には新たに拝領した領地を改名した例はいくつも見られます。

豊臣秀吉

  • 近江今浜⇒長浜

単純ですが、信長の「長」から取ったということですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E6%B5%9C%E5%B8%82#.E5.B8.82.E5.90.8D

  • 摂津石山⇒大坂

元から大坂という地名は本願寺が本拠としていた頃からあったらしく、他にも傾斜地を意味して「おさか」という表記もあったそうな。それが「坂」では「土に反る」という字面が「士が反する(武士にそむく)」という意味を連想させること、あるいは単に役人が書き間違えて明治元年に現在の「大阪」になったというのが面白いですね。
http://chimei-allguide.com/27/000.html

蒲生氏郷

この人の場合、なぜか「松」を好んで使っていたのですが、それは自身が生まれ育った近江日野の若松の森から来ているようです。
http://www.city.aizuwakamatsu.lg.jp/j/mayor/kouryu/kouryu_12.htm

  • 伊勢の四五百森(よいほのもり)⇒松坂*1
  • 陸奥会津の黒川⇒若松

黒田孝高・長政

関が原の戦い後にその功に応じて封じられた筑前52万石に新たに築いた城の名を、もともとの領地である備前福岡にちなんで命名し、以降地名として定着したそうです。
http://www.h3.dion.ne.jp/~nyushif/fukuoka_chimei.htm

その他

  • 越前北の庄⇒福井

「北」が敗北に通じるとして嫌い*2、福が居る場所として「福居」に改め、のちに「福井」に改められた。
http://chimei-allguide.com/18/000.html

「府中」は「不忠」に通じることから浅間神社裏手にある「賤機(しずはた)山」に因んで改称されたのだけど、「賤」は「賤(いや)しい」に通じることから嫌い、「静」 の文字を取った。
http://chimei-allguide.com/22/000.html

  • 土佐大高坂山⇒河中山⇒高知山

鏡川と江の口川に囲まれた地であったことから山内一豊入城時に河中山(こうちやま)と改名。しかしこの地は洪水が多く、2代藩主忠義が「河中」を嫌ったために「高智山」に改名された。その後「山」が省略されて「高智(知)」となった。
http://chimei-allguide.com/39/000.html


それから時代は下りますが、北海道の地名はアイヌ語に由来する地名が多いのですが、明治時代以降に本州からの開拓者たちが出身地に因んでつけた地名もありますね。
池田・伊達・新十津川・北広島・新山梨など
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E3%81%AE%E5%9C%B0%E5%90%8D%E3%83%BB%E9%A7%85%E5%90%8D#.E5.86.85.E5.9C.B0.E3.81.8B.E3.82.89.E3.81.AE.E9.96.8B.E6.8B.93.E3.83.BB.E5.85.A5.E6.A4.8D.E3.81.AB.E9.9A.9B.E3.81.97.E3.81.A6.E4.BB.98.E3.81.91.E3.82.89.E3.82.8C.E3.81.9F.E3.82.82.E3.81.AE
このあたりは北米大陸に入植したヨーロッパの人たちとの類似性が見られるようです。


ここで挙げたのはほんの一部で探せば他にもありそうです。
それにしても、こうやって調べてみると日本の地名は昔から様々な理由で変えられてきているのですねぇ。ちなみに最近の流行はひらがな地名ですが、遠い未来の人からしたらその根拠を漢字の衰退または嫌悪とか分析されるのかな。

*1:坂(阪)は豊臣秀吉が当時築いていた大坂城にちなんでいる。

*2:実際、柴田勝家が秀吉に敗北して自害の場所だし