4期・6冊目 『鋼鉄の海嘯―マリアナ攻防戦』

マリアナ攻防戦―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

マリアナ攻防戦―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

マリアナが落ちれば本土が爆撃される―B29の脅威を察知した日本は、激戦の末に守り抜いたトラック環礁の放棄を決断。マリアナ諸島に布陣し、絶対国防圏の死守に徹する。一方、欧州戦線の急変により対日戦の決着を急ぐ米軍は、空前の渡洋進行作戦を発動。圧倒的物量で日本軍をねじ伏せ、遂にサイパン上陸を果たした。押し寄せるM4中戦車! 精鋭「呂式戦車」が迎え撃つが・・・・・・。密林を揺るがす死闘の決着は!?

サブタイトルが変わった間に欧州情勢が大きく動きました。前巻の「ドイツは信用できない」発言がなんらかの伏線になるとは思っていましたが、なんと不可侵条約を破ってドイツが英本土占領、そこを足がかりに欧州反攻を企てていたアメリカ涙目。アメリカの八つ当たりで前回にも増す大攻勢を受ける日本いい迷惑。実はちゃっかり日英中立条約を結んでいたそうで。
勝つには勝ったものの、損害が大きい日本軍はトラック放棄してマリアナ諸島を要塞化して絶対国防圏とする。B29の開発が進んでいるアメリカは本土空襲によって日本屈服すべく、飛行場に好都合なマリアナ攻略を目指す。このへんは史実と似たような流れですな。*1
ニューギニア⇒フィリピンの陸軍主導ルートと、中国・イギリスとの大陸方面での攻防が無いだけ日本にとっては戦力を集中させやすい。シベリア以降、出番が少ない陸さんが不平を言ってないか気になりはしますが、今シリーズは陸海協調なのでそのへんは無視されてうまくいっているのでしょう。


それにしても横山信義氏は太平洋戦争の改変を今まで何度もやっているので、今回はどういう展開にするのかが気になるところでしたが*2、今回は戦略・戦術ともに史実の日本軍らしくなさをかなり取り混ぜているようです。守りぬくには仕方ないとはいえ、正直そこまでするかというくらいに。
海戦においてはパターンだなぁと思われるところを微妙に変えて読者の予想を裏切る箇所など苦労しているんでしょうね。例えばサイパン沖の夜戦。てっきり日本軍負けフラグかと思いきや、そんなことなかったし。最近宇垣纏の登場機会が多いので、勝つのか負けるか読めなくなってきたなぁ(笑)


そしてマリアナを巡る戦いは、膠着のあと猛将ハルゼーを迎えて第2ラウンドへ。珍しく戦艦として登場した「信濃」は「武蔵」と同じ運命を辿るのかそれとも生き残ることができるか?

*1:この世界ではドイツへの無差別空襲が起きていないので、既定路線にするには都合良過ぎる気がするけど

*2:例えば『修羅の波濤』でもマリアナ攻防やっているし