3期・51冊目 『夜市』

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

内容紹介
何でも売っている不思議な市場「夜市」。幼いころ夜市に迷い込んだ祐司は、弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れた。野球部のエースとして成長した裕司だったが、常に罪悪感にさいなまれていた――。

表題作の「夜市」と「風の古道」を収録。どちらも子供が主人公*1で、前者は兄弟、後者は親友の存在が鍵となっている物語です。
大人の今読むと、ホラーというより、どことなくノスタルジックな薫りがするファンタジーではありますが、小学生くらいにこういった話を読むと充分怖った気がします。妖怪・幽霊・人攫い・・・子供の頃にはずっと身近で怖かった存在が当たり前のようにいる世界。そんな世界に人間の子供が紛れ込んだらどうなるか、という意味ではリアルに書かれているように思えます。
夜市にせよ古道にせよ、あちらの世界には厳格なルールがあり、たとえ偶然に紛れ込んだとしても、元の世界に戻るためには代償を必要とする。それが主人公の少年にとっては、最初はほんの遊びのつもりだったのに人生が激変してしまうという重い内容に仕立てられています。


どちらかというと私は「風の古道」が好きです。古き日本を描いた宮崎アニメのような雰囲気が出ていました。
「私」が事故にあった親友・カズキを救う主人公の旅と、古道を案内する旅人・レイの出生にまつわるエピソードの2つの軸が絡みあいながらストーリーが進んでいき、とても奥深さを与えているように思えます。

*1:「夜市」は登場時は大人で回想シーンが子供